3月初旬、「トヨタ自動車をはじめとする自動車業界が、福島県で水素事業に参画する方針を固めた」と報じられました(日本経済新聞 2021年3月5日)。100年に一度と言われる大変革期にある自動車産業ですが、その中心となり得るのが「水素」という新エネルギーです※。

自動車産業のみならず他の分野でも広く注目を浴びている水素ですが、特に最近は「脱炭素化」に向けた動きの中で期待が高まっています。今回は、水素がなぜ「新しい」エネルギーなのか、その特徴や製造における革新的技術の現状を解説します。

※自動車産業の大変革については、以下の記事もご参照ください。
ガソリン車よ、さようなら! EV急拡大にも懸念と課題
電気自動車もさようなら。未来のモビリティ・水素燃料電池車が走る

次世代のエネルギー、水素

水素が次世代のエネルギーとして脚光を浴びているのはなぜか、最初に少しばかり科学(化学)的な面を紐解きましょう。

まず、水素の一般的な話から始めます。「水兵リーベ僕の舟…」(懐かしい暗記の仕方)で始まる元素周期表を覚えているでしょうか。その中で水素は原子番号1、元素記号はHであり、通常、原子が2つ結びついた水素分子(H2)の形をとり、無色、無臭で、地球上、最も軽い気体です。

自然界では水素分子の状態として存在することはほとんどなく、水(H2O)などのように他の元素と結合した化合物(化石燃料、有機化合物など)として地球上に大量に存在します。

水素は主に産業分野で用いられていますが、一般的には必ずしも馴染みが深いものではありません。記憶に残っているとしたら、福島第一原発事故の水素爆発(原子炉内の金属と水が反応して生成)ではないでしょうか。また、水素はロケット燃料にも使われています。