パナソニックは何を狙っているのか

パナソニックは今回のBYの完全子会社化で何を狙っているのであろうか。

パナソニックは「現場プロセスイノベーションの進化」という視点で、「造る」、「運ぶ」、「売る」それぞれの現場をデータ収集に始まり、それらの蓄積と分析、活用することを狙って今回の買収へと至っている。

どれほどデジタル空間でのデータ蓄積や処理速度や分析の精度が向上しても、私たちが何らかのサービスとして改善されていると実感するには、リアル抜きには語ることができない。

これは、パナソニックに限らず、グーグルのような「デジタル空間の王様」のような企業においてでも、これまでのスマートフォンや自動運転車への取り組みのように、リアルやハードウェアをいかに事業モデルに取り入れるかに苦心しているかを見ていればわかるところだ。

また、2020年以降のコロナ禍において、世界中でEコマースが大きく伸長した。消費者の行動が変化せざるを得なかったのである。新型コロナウイルス感染症の拡大はワクチン接種の状況により今後は変化していくであろうが、今後も消費者行動の変化のトレンドは続いていく可能性は高い。

そうした中でサプライチェーンの変化は必至である。パナソニックも今後のサプライチェーンとして、これまで以上に顧客を中心として、「工場」、「倉庫」、「店舗」、「配送」といった要素が絡み合う世界を見据えている。

日本に世界を代表するようなSCM企業が存在しない中、パナソニックがその領域に挑戦するという点は非常に興味深い。

余談であるが、自動車などを活用したサービス、MaaS(Mobility as a Service)が最近では話題になることが多いが、輸送はあくまでも手段であり、顧客はどの段階で満足するのかという観点から言えば、モノ作り段階から商品やサービスのデリバリーといったところまでのサプライチェーン全体を対象にする方が大きい。

したがって、パナソニックの今回のBYの買収がそこまで領域として見据えているのであれば、かなり大きな世界観を持っていると言えよう。