バウアーの病名判明
しかし私はここでひとつ疑問に思ったのです。
超音波検査は確定診断ではありません。確定診断ではないのに副作用が強いステロイドと免疫抑制剤を処方続けていいのかと。
その頃炎症性腸疾患についてインターネットで調べていた私は、この病気が本当だったら炎症性腸疾患の場合、平均予後長くて2年、早い子だと3ヶ月と知識を得ていました。
この病気ではないと思いたい気持ちもあり、セカンドオピニオンを受診することに決めました。
セカンドオピニオンの病院で、一通り検査を実施してもらいました。
「これはもしかしたらもっと悪い病気が隠されているかもしれません。しかし自分は胃腸の専門医ではないので、専門医への紹介状を書くからそこへ行ってきちんと確定診断してもらいましょう」とお勧めされました。
紹介状をもらい胃腸の専門医がいる高度医療センターへ行くことになりました。
そこで初めて内視鏡検査をすることになりました。
全身麻酔下の検査ですので不安もありましたが、確定診断をし本当の病気に合った治療方法を施したいと強く思いました。
内視鏡検査当日、私の心配をよそにバウアーはお出かけと勘違いしとても喜んでいたのを覚えています。
一泊での検査だったので翌日迎えに行くと、先生曰く「夜は鼻をクンクンと鳴らして寂しがっていましたが、その他は驚くほどおとなしかったです」と言われました
バウアーは本当におとなしく手のかからない子でしたが、やはり病院という違う環境で一夜を過ごすのは寂しかったようです。
私を見つけて走りながら飛んできました。とても可愛かったです。
内視鏡検査の結果、やはり「炎症性腸疾患」であることが判明しました。
またそこから波及して「リンパ管拡張を伴うリンパ球形質細胞性腸炎」という病気も発症していました。
初めて聞く病気でした。
先生は「この子の場合、すでに重度です」と告げました。
私は頭が真っ白になりながらも、先生に「この後どうすればこの子は1日でも長く生きられますか?」と聞きました。
「柴犬とはそもそもとても相性の悪い病気で、柴犬の場合、ステロイドの耐性も他の犬種の犬よりも早く出てしまいます。しかし食事療法と薬剤での治療で頑張りましょう!」
この言葉を聞き、何としても頑張ろうと決意しました。
私とバウアーの二人三脚での治療
ここから私はありとあらゆる事を調べました。インターネットで毎日検索する日々。
しかし結局ネットに出ているのは経験談のみでした。
経験談も大変参考になりましたが、バウアーにはバウアーに合った治療をしないといけないと気づきました。
それからは毎回専門医にこういう治療を考えているなどと相談をするようにしました。
実際どのような治療をしたかというと、まずは食事療法です。
いわゆるグルテンフリー、また低脂肪食を徹底することになりました。こちらも紹介された食事療法専門医に伺い、バウアーに合ったレシピを貰っていました。
自慢ではありませんが、私は自分の料理は全くしません。
キッチンに立つなんていうことは5年に1度くらいです。
しかし大切な家族のためには、キッチンに立つことができるのです。新たな発見でした。
「これなら食べてくれるかもしれない」と思い、試行錯誤しながら手作り食を作る日々はとても大変でしたが、バウアーのためなら苦にもなりませんでした。
漢方の薬も調べました。こちらも紹介された動物の漢方治療の専門医の所へ伺い、バウアーに合った漢方薬を処方してもらいました。
治療を始めると、しばらくは症状も安定してきました。とても元気になって、ドッグランにもよく行きました。
旅行にもよく行きました。バウアーの生まれ故郷である大阪にも何度も遊びに行きました。
治療開始から1年。漢方や食事療法で概ね安定していました。
このままの状態がずっと続けばいいと願う一方で、「今日は体調がいいけれども、明日はどうかわからない」という不安が常につきまとっていました。
そしてその年の年末、恐れていたことが起きました。
「症状の悪化」です。
再度、水下痢を繰り返すようになりました。水下痢を繰り返す原因を追求するため、その度に胃腸の専門医に連れて行きました。
あまりにも症状が悪化してしまった場合には、ステロイドの皮下注射を行い、症状を安定させることが先決です。
症状が安定したら再度漢方や食事療法を続けるというルーティンでした。
だんだんと体調不良が増えていった
そして年が明け2017年、バウアーが4歳になる年です。
3月までは元気でしたが、安定しない時が増えていきました。
私は藁をもすがる思いで胃腸の専門医に「他に治療方法はないですか?」と聞きました。
すると「幹細胞移植手術を試してみる価値はあると思う」という答えが返ってきたのです。
初めて聞いた幹細胞移植手術という言葉でした。
いわゆる再生療法で、バウアーの脂肪肝細胞を背中から採取し培養させ、それを点滴でバウアーの体内に戻す。これを4回繰り返すと症状が改善される場合もあると言われました。
しかし費用はかなり高額です。「かなり高額になるので、じっくり考えてみて下さい」とのことでした。
いろいろ考えましたが、「お金には変えられない」と思い、幹細胞移植手術をする決断をしました。
助けられる手段があるなら元気にしてあげたい。この時バウアーはまだ4歳です。
たった4歳で、この小さな体で、お腹が痛い時、いつもいつも頑張っているこの子を少しでも楽にさせてあげたい。
元気にさせてあげたい。その気持ちだけでした。
幹細胞移植を4回実施し、そこから劇的に元気になりました。
先程お伝えしたように、この1年はなかなか症状が安定せず、体重も増えたり減ったりを繰り返していました。
しかし幹細胞手術を受けてからは体重も15kgまで増えました。
このまま症状が安定し、寛解するかもしれないと淡い期待を抱いていました。
しかしその期待は虚しくも打ち砕かれてしまうのです。