お金に真面目な人ほど住宅ローンの残高を気にする傾向があるかもしれません。
住宅ローンという借金があるだけでストレスを感じてしまい、お金が貯まると繰り上げ返済をしている人もいるでしょう。
しかし、住宅ローンを繰り上げ返済することばかりに気を取られ、「生活資金の貯蓄ができず、ゆとりのある老後が過ごせない」となると、少し問題があるかもしれません。
そこで今回は、住宅ローンの繰上げ返済を再考すべき3つの理由について、ご紹介したいと思います。
その1:住宅ローン控除のメリットを受けられなくなる
住宅ローンを組んで一定の要件を満たすマイホームを取得した場合、住宅ローンの年末残高、あるいは取得対価のうち、いずれか少ない方の金額の1%を所得税(一部、翌年の住民税)から10年間控除できるのが住宅ローン減税です。
尚、新築の場合は令和3年9月末まで、建売住宅や中古住宅等の場合は令和3年11月末までの期間に契約し、令和4年12月末までに入居した場合は、特例措置で減税期間が13年間に延長されます。
この住宅ローン減税は年末の融資残高の1%が控除額となりますので、住宅ローン減税適用期間中は、繰上げ返済をしてしまうと減税額が下がってしまいます。
減税制度をしっかりと活用したい人は、借り入れ後10年間(もしくは13年間)は繰り上げ返済をしない方がよいかもしれません。
特に最近は超低金利時代です。
1%を切る金利で住宅ローンを組んでいる人もたくさんいるでしょう。それに対し1%の減税効果があるため、実質住宅ローンがマイナス金利状態になりますね。
この状態では繰り上げ返済をするメリットはあまりないと言えるでしょう。
その2:住宅ローンは団体信用生命保険で完済できる可能性がある
住宅ローンを組む時に、ほとんどの人が団体信用生命保険(団信)に加入されているでしょう。
この団信は何かというと、債務者(住宅ローンを組んでいる人)に万が一のことがあった場合に、保険金で住宅ローンが完済できる保険です。
加入時にいくつかのプランの中から保障を選べますが、内容によって住宅ローンの金利が0.2~0.3%程度上乗せになるものもあります。
最もシンプルな保障は、死亡と所定の高度障害状態になった場合に残債が完済されるプランです。
それ以外にも、3大疾病(ガン、急性心筋梗塞、脳卒中)で所定の状態になった時に残高が完済となるプランや、8大疾病(3大疾病に加え、糖尿病、高血圧症、肝硬変、慢性膵炎、慢性腎不全)で適用になるプランも人気です。
焦って繰り上げ返済した後に、万が一の事があって所定の状態になった時、どうなるでしょうか。
十分な貯金がない状況で医療費や生活費がかかってしまうのは最悪のシナリオといって良いでしょう。
なにかあった時に経済的に困らない保障や預貯金が確保できていない場合は、焦って繰り上げ返済をする必要はありません。考え直したほうが賢明といえるでしょう。
その3:住宅ローン以上に低金利でお金を借りる手段はない
住宅ローンは融資金額が大きいので、どうしても負担を大きく感じてしまいます。
しかし、よく考えると住宅ローン以上に低金利の融資商品はないと言っても過言ではありません。
例えば、住宅ローンを繰り上げ返済した後、教育資金や自動車購入資金が用意できずローンを組む場合、住宅ローン以上に高い金利で借りざるをえません。
低金利で借りたお金を早々と返済してしまったばっかりに手元資金が不足、慌てて別のローンを組んだら高金利だった・・・これでは、何のために繰り上げ返済をしたのか分からなくなりますね。
ですから、手元の現金を確保しておくことは、とても重要なことと言えます。
住宅ローンには「期限の利益」が定められています。これは、定められた期限まで、借りたお金を返さなくても良いという債務者の利益です。
毎月の返済を滞納するなどの事由がない限り、この期限までは、残っている債務を一括で返せと言われることはありません。
繰上げ返済に勤しむあまり、手許現金が十分にないまま失業や休業などで給与収入が激減した状況で、住宅ローンの返済が滞ってしまうと、期限の利益を喪失し、その時点で残債を一括で返済することを求められる危険があります。
そうなってしまうと元も子もありません。
少なくとも超低金利の間は、無理して住宅ローンを繰り上げ返済するのは考え直し、手元現金を確保しましょう。
それでも毎月生活費に余裕がある場合は、老後の生活費のために積立投資をするなどして資産を増やすことを優先させることを検討されてはいかがでしょうか。
おわりにかえて
「住宅ローンを組んでいるが、そうそう病気や高度障害、死亡することなんてないから大丈夫」
「毎月の返済が苦しくなることは無いと思うから、金利がもったいないし住宅ローンは早く終わらせたい」などと思っていませんか。
人間は「自分だけは大丈夫」という根拠のない自信を持ってしまいがちです。
私が信金で勤務していた時も、実際に病気や死亡で住宅ローンを保険で完済したご家族や、事業がうまく行かずに住宅ローンを滞納してしまい、代位弁済の手続きを取らざるを得なくなったご家族を何世帯もみてきました。
皆さんが思っている以上に、これらのことは身近に起こっています。
そんな時に、重要なのはやはり貯蓄です。無理に住宅ローンを繰り上げ返済する前に自分は万が一の場合の備えがあるのか十分ご検討ください。
また、住宅ローンを返済している間も、老後生活に向けて貯蓄を増やす準備をしていきましょう。
住宅ローン完済後も生活は続いていきますので、毎月の固定費を見直しながら毎月積立投資をする資金を捻出できると良いですね。
その際、老後資金のための貯蓄については、投資信託などの資産運用商品を上手に活用して、効果的な資産形成を行うことも忘れてはいけません。
最近では資産運用の無料セミナーなどもオンラインで開催されていますので、これを機に一度ライフプランを見直してみてはいかがでしょうか。
