外食業全体の業績が底となった4月の段階では、悪影響を小さく抑えることができたのは吉野家でしたが、7月以降はすき家が好調さを見せ、感染「第2波」「第3波」の到来に際してもほぼ前年水準をキープし続けました。他方、松屋は御三家の中で最も打撃を受け、その後の回復にも時間がかかっています。
すき家がいち早く回復を遂げた背景には、牛丼御三家の中でも最後発チェーンとして力を注いできた、他店にはない斬新な牛丼メニューや、冬季恒例の鍋定食メニューを今シーズンはアルミ鍋で提供するなど、テイクアウト需要に素早く商品政策で対応できたことが挙げられるでしょう。
客数の前年同月比においても、すき家は6月以降つねに競合2社を上回る実績を示しており、コロナ下の消費者ニーズをうまくつかんでいるように見えます。
郊外型の立地 × テイクアウト強化が寄与
牛丼御三家の業績に差が生じた要因としては、店舗展開の規模や店舗立地などの違いもあると思われます。各チェーンの国内店舗数(2021年1月末現在)と店舗立地に求める要件を、創業の早い順に列挙してみましょう。
- 吉野家…1191店舗/乗降客5万人以上の駅前、同10万人以上の駅周辺、繁華街
- 松屋 …954店舗/乗降客2万人以上の駅20m圏内、飲食店の少ない事業所街
- すき家…1945店舗/郊外ロードサイド中心、街中のビル型店舗やフードコートなど
すき家については公式サイトに立地要件が明記されていないため、既存店舗の立地特徴を示しました。牛丼専門店という業態を創り出した吉野家がもっとも高効率な場所を確保し、後発組がすき間を狙っていったプロセスが見て取れます。