新型コロナの感染拡大で大打撃を受けた業界の一つが外食産業です。業界全体の昨年1年間の売上高は、前年比85%という落ち込みぶりでした。

とはいえ、業態ごとに被った打撃には大きな差があり、影響が少なかったファストフードでは、マクドナルドをはじめとする〈洋風〉ファストフードが前年比+5.5%と伸長。及ばずながら牛丼チェーンなどの〈和風〉ファストフードも▲5.5%に踏みとどまっています(日本フードサービス協会調べ)。

さらに牛丼チェーンに注目してみると、すき家・吉野家・松屋のいわゆる“牛丼御三家”の中で「すき家」の健闘ぶりが目立ちます。

いったいどのような強みが「すき家」の業績の背後にあるのでしょうか。

前年水準へ速やかに回復した「すき家」

まず、新型コロナに翻弄された2020年を通じて、すき家・吉野家・松屋の既存店売上高がどのように推移したのか、月ごとの前年比で確認してみましょう。

2020年の既存店売上高 前年同月比の月次推移1/1

出所:各社月次売上資料より編集部作成

外食業全体の業績が底となった4月の段階では、悪影響を小さく抑えることができたのは吉野家でしたが、7月以降はすき家が好調さを見せ、感染「第2波」「第3波」の到来に際してもほぼ前年水準をキープし続けました。他方、松屋は御三家の中で最も打撃を受け、その後の回復にも時間がかかっています。

すき家がいち早く回復を遂げた背景には、牛丼御三家の中でも最後発チェーンとして力を注いできた、他店にはない斬新な牛丼メニューや、冬季恒例の鍋定食メニューを今シーズンはアルミ鍋で提供するなど、テイクアウト需要に素早く商品政策で対応できたことが挙げられるでしょう。

客数の前年同月比においても、すき家は6月以降つねに競合2社を上回る実績を示しており、コロナ下の消費者ニーズをうまくつかんでいるように見えます。

郊外型の立地 × テイクアウト強化が寄与

牛丼御三家の業績に差が生じた要因としては、店舗展開の規模や店舗立地などの違いもあると思われます。各チェーンの国内店舗数(2021年1月末現在)と店舗立地に求める要件を、創業の早い順に列挙してみましょう。

  • 吉野家…1191店舗/乗降客5万人以上の駅前、同10万人以上の駅周辺、繁華街
  • 松屋 …954店舗/乗降客2万人以上の駅20m圏内、飲食店の少ない事業所街
  • すき家…1945店舗/郊外ロードサイド中心、街中のビル型店舗やフードコートなど

すき家については公式サイトに立地要件が明記されていないため、既存店舗の立地特徴を示しました。牛丼専門店という業態を創り出した吉野家がもっとも高効率な場所を確保し、後発組がすき間を狙っていったプロセスが見て取れます。

しかし、コロナ下での外出自粛・リモートワークの拡大によって、「集客しやすく回転の良い立地」の条件が180度変わり、すき家にとっては追い風となりました。ドライブスルーに対応している店舗も、吉野家・松屋がそれぞれ150店前後なのに対し、すき家は800店以上(全店舗の4割以上)もあり、高まるテイクアウト需要を吸収できたと思われます。

次に、このようにコロナ下で健闘した「すき家」を傘下に置くゼンショーホールディングス(7550)に、目を転じてみましょう。

コロナ後を見込む株価上昇。成長への次の一手は?

ゼンショーホールディングス(以下、ゼンショーHD)は、吉野家ホールディングス(9861)や松屋フーズホールディングス(9887)と比べ、企業規模が大きく多角化も進んでいるため、事業全体に対する「すき家」のインパクトは吉野家や松屋ほど大きくありません。

とはいえ、メインブランド「すき家」を含む〈牛丼カテゴリー〉が、2021年3月期 第3四半期累計で売上高1,627億円をたたき出し、前期比わずか3.1%の減少に抑えられたことは好感され、当期純利益の赤字(▲1億9200万円)も株価を大きく押し下げることはありませんでした。

吉野家HD、松屋フーズHDの株価はコロナ以前の水準に戻っていませんが、ゼンショーHDの株価はコロナ以前を上回る水準にまで回復しています。

2020年2月に2,400円台だった株価は、コロナ影響が顕在化しはじめた3月に1,700円台まで下落しましたが、7月度の好調な成績が発表されて以降上昇し、現在は2,800円台を推移しています。

現在、すき家は業界トップに位置していますが、牛丼チェーン3社はいずれも店舗数の伸びが鈍化しており、アフターコロナを見据えた次の手を模索している状況と言えます。コロナ収束後に消費者の行動がどのように変わっているのか、その変化にどれだけ迅速に対応することができるかが、次なる業界地図を決することになるでしょう。

吉野家、松屋の2社にとっては、都市部の繁華街に人が戻ってくるまで、直面する課題への対処とコロナ後への準備の両方に目配りが求められる、厳しい時間が続きそうです。

まとめ

郊外型の店舗立地とテイクアウト施策によって、すき家はいち早く業績を回復し、牛丼御三家の中でも大きな存在感を見せつけました。このアドバンテージを生かしてコロナ禍を乗り切った後、いかなる成長戦略へ舵を切っていくのかが注目されます。

参考資料