開催延期を決めた昨年3月に比べ、国内外のコロナ感染状況は大幅悪化

もう一つ改めて確認するべきは、1年延期を決めた昨年3月下旬と直近の感染状況です。開催地である東京都の新規感染者数(1日当たり、以下同)を見ると、昨年3月下旬は概ね60~70人でしたが、直近は概ね1,500人前後です(注:曜日によってバラツキがあるので中心値を算出)。

昨年3月に比べると検査数が格段に増えているため、単純比較が適当かどうか定かではありませんが、桁違いに拡大していることは確かです。

また、全世界ベースでは、昨年3月下旬が6~7万人だったのに対して、直近は60~80万人で推移しており、ザックリ言って10倍です。なお、新規感染者数のみならず、死亡者数、入院者数、重症者数など全てのデータにおいて、昨年3月下旬より大幅に悪化しています。特に、欧米や南米などでの感染状況悪化が際立っているのが特徴と言えましょう。

外国人入国制限が続く中、無観客開催しか選択肢がないのか?

この国内外における感染状況を見る限り、半年後に東京五輪を開催するのは現実的でないと言わざるを得ません。仮に開催となれば、現在は全面停止している外国人の新規入国規制を早急に大幅緩和する必要がありますが、これも非現実的です。

確かに、出場するアスリートとその関係者だけを特例扱いして、事実上の無観客で開催する案もなくはないでしょう。しかし、無観客で開催するスポーツの祭典、平和の祭典にどれだけの意味があるのか甚だ疑問に思う人は多いはずです。また、いわゆる経済効果も期待できないでしょう。

それでも、現時点では、東京都や日本政府を含む実行委員会は、「人類がコロナに打ち勝った証としての大会」を掲げており、少なくとも表面上は、開催中止を想定していないようです。この熱意は通じるのでしょうか。