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インド株式市場は、2月下旬から3月上旬にかけてコロナショックで急落した後、3月下旬から上昇基調を続けており、11月には史上最高値を更新した。新型コロナワクチン開発の進展、米国の大統領選挙でのバイデン氏の勝利、国内では予想を上回る7-9月期の企業決算が追い風となっている。

一方、国債市場は昨年12月下旬以降、インド準備銀行(中央銀行)が金融緩和スタンスを続ける中で、上昇(利回りは低下)基調を維持している。

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インド政府、コロナ禍における経済対策第3弾を発表

インド政府は11月12日、新型コロナウイルスのパンデミック(大流行)が発生してから第3弾となる総額350億米ドル相当の経済対策を発表した。対策には、始まったばかりの景気回復を下支えするための緊急融資枠保証スキームの延長、新規雇用の創出、インフラ整備の強化、住宅取得の促進、農村支援など12項目が含まれている。

政府の発表によると、5月の第1弾、10月の第2弾と合わせると、コロナ渦における経済対策の規模は国内総生産(GDP)比15%に相当する。しかし、新規歳出を含めた財政出動の全体的な規模は低水準にとどまったままだ。代わりに、中央銀行の緩和的な金融政策による市中への流動性供給の拡大とそれを受けた市中銀行による融資の増加が目立つ格好となっている。

第3弾の経済対策は発表されたばかりだが、コロナ渦で最も大きな打撃を受けている部門の支援など、対象を絞り込んだ新たな対策への期待がすでに高まりつつある。しかし、モディ政権の財政保守主義を堅持する姿勢に変化が起きる可能性はなさそうだ。実際に、政府はコロナ渦で著しい歳入不足が生じているにも関わらず、財政赤字の抑制を試みている。

経済対策第3弾の主要項目

信用供給支援、融資枠保証の延長:5月に発表された中小企業向け緊急融資枠保証スキーム(ECLGS)は2021年3月まで延長された。これによって、中小企業は借入総額の最大20%までは完全保証・無担保ローンを利用できる。第3弾の対策では、ヘルスケアに加えて26業種を対象とする信用供給支援も延長された。

生産連動型インセンティブ(PLI)スキーム対象の拡大:PLIスキームの対象はこれまでは3業種(電子機器、医療機器、医薬品)に限定されていたが、新たに自動車・自動車部品、通信機器、食品加工、繊維など10主要業種が加わった。同スキームでは、企業の競争力を向上させて国内生産と輸出の増強を図るために5年間にわたり政府の承認を受けた企業に補助金が直接供与される。