雇用拡大インセンティブ:企業の新規雇用を増やすために、政府は、2020年10月から2年間に新規雇用される従業員に対し、企業に代わって従業員積立基金(EPF)を補助する。
インフラ、不動産セクター支援:政府は不動産セクターの再生のためとして、①将来のインフラ支出に備える政府ファンドに出資する、②1戸あたり価格が2,000万ルピー(約2,820万円)までを上限とする住宅について不動産開発業者と住宅購入者を減税の対象とする、③「ハウジング・フォー・オール(すべての人に家を)」計画に1,800億ルピー(2,540億円)を追加供給する、と発表した。
農村経済の支援:政府は、農村部向けの肥料補助金として6,500億ルピー(9,165億円)を供出するとともに、1,000億ルピー(1,410億円)を農村の雇用促進またはインフラ整備促進に使用可能な予算に組み入れた。
インドは、3月末から世界で最も厳しいと言われた全土封鎖を実施し、6月から段階的に解除した。経済指標は最近数ヶ月、回復傾向が持続していることを示しているが、封鎖の影響は現在も続いている。国内の新型コロナウイルス感染者数は11月20日に900万人を超え、米国に次ぐ世界2位となったままだ。しかし、1日当たりの死者数は、9月にピークに達した後、徐々に減少している。
一方、首都ニューデリーは最近数週間、「第3波」に見舞われており、感染者数の累計は11月18日に50万人を突破した。インドはヒンズー教最大の祭典「ディワリ」を11月14日に迎えたが、保健当局は祭事後の11月下旬から12月にかけて感染拡大が懸念されると国民に警戒を呼び掛けている。
この数週間、ワクチン開発が進んでいるというニュースが相次いだことを受けて、インド経済の先行きを楽観視するエコノミストが増え、2020年度(2020年4月~2021年3月)の経済成長率予想が上方修正された。経済対策第3弾の景気の下支え効果に加えて、新型コロナウイルスの新規感染者数が減少すれば消費者マインドの回復も期待されることから、9月以降強まっている経済の回復基調はさらに鮮明になると期待されている。
経済の先行きに関しては、コロナ渦の最中に政府が相次いで打ち出した改革措置は、中期的な成長にプラスの効果をもたらすことが予想される。
世界的なパンデミックの中でインド政府が発表した一連の経済対策には、経済の構造変化につながる長期的な改革政策が織り込まれている。インド政府が、そうした改革を進めることによって、中国離れと進出先の多様化を加速させている国際企業にとってインドがより魅力的な投資先、生産拠点として認識されることを狙っているのは言うまでもない。
発表された改革措置が政府の筋書き通りに実行されないリスクがあるものの、当社では、農村に存在する中間流通業者の排除を含む農業関連法の改正、特に「非組織労働者」層を意識した労働法の改正、外国直接投資の対象部門の拡大、大規模な政府系機関の民営化などの改革が、今後数年にわたる持続的な経済成長の堅固な基盤になる可能性があると見ている。