6月から横須賀市周辺で相次いで通報のあった異臭騒ぎ。横浜市内でも「ガスのような臭いがする」「ゴムが焼けた臭いがした」との119番通報が相次ぎ、発生は5カ月で10回、通報は680件を超えています。

その原因は? 発生源はどこなのか? と関心が高まっているものの、特定は困難を極めています。神奈川県が行った大気中の化学分析結果をもとに、その化学的側面と現時点で考えられる発生源などについて考えてみましょう。

異臭大気の化学分析と検出された化学物質

神奈川県環境科学センターは、横須賀市消防庁舎などで採取した異臭大気をガスクロマトグラフ質量分析計(混合物を分離し、それぞれの分子量を測定する機器)を用いて分析。10月14日と15日、および24日と26日に採取されたものの分析確報値を11月4日に公表しています。その後、11月6日にも横浜市で異臭の通報があったようですが、大気採取には至っていません。

これまで4回の分析結果では、いずれもガソリンに含まれる物質(ブタン、ペンタン、イソペンタン)が検出されています。このうち、特に10月26日が高い濃度であり、異臭が感じられなくなったときと比較して90~約200倍の濃度で検出されたとのことです。

10月26日の分析結果では、ベンゼンの濃度が12~13μg/m3と、環境基準値(3μg/m3)より高く検出されました。また、アクリロニトリルについては、2.1μg/m3と国が定める指針値(2μg/m3)よりやや高く検出されています。

上記の5物質以外にも、有害大気汚染物質のうち環境基準値または指針値が定められている物質を分析しましたが、いずれの日も分析結果は環境基準値または指針値を下回る濃度だったとのことです。以上の結果、また異臭を感じた時間が短時間であることから、神奈川県環境科学センターはただちに健康に影響を及ぼす恐れはないとしています。