ブタン、ペンタンなどがハイドレートを形成しているかどうかは確かではありませんが、海底からこれらの炭化水素が表出しているとすれば地殻に何らかの異常が発生しているかもしれず、そうなれば地震との関係が心配になります。インターネット上では「大地震の前触れ?」などの声がありますが、三浦半島の活断層は異臭の通報があった地点とは一致せず、地震の前兆とは考えにくいようです。

ちなみに、ガスハイドレートが原因であるならばメタンガスが検出されなければなりませんが、今回の分析では検出されていません。ただし、メタンの沸点が低いため、検出不能だった可能性もあります。

ガスハイドレートとは関係なく、地殻変動によって何らかのガスが発生することは考えられます。関東大震災(1923年)の際に三浦半島で異臭が発生したとの記述、阪神・淡路大震災(1995年)や東日本大震災(2011年)でも異臭があったとの報告が気になるところです。

最近では千葉県の九十九里浜で、多くの蛤が砂浜に打ち上げられて騒ぎになっています。海底で異変が起きているのではないかと、大地震の予兆説を唱える向きもあります。

③青潮説

以上の他に、海の青潮説もあります。青潮とは、海底に溜まったプランクトンの死骸が分解されるときに酸素が欠乏し、硫化物を含んだ水が海面に上がり、青白く見える潮のことで、硫化水素が発生します。しかし、炭化水素が青潮で発生するのかは甚だ疑問です。

さらなる分析結果に期待

異臭問題は大いに関心を呼び、ニュースサイトのコメント欄などでは、「原因がわからないというのは怖い」「臭いの元が人工のものか、地中からのものか」「人工的な異臭なら、早く調査して解決してほしい」などと書き込まれています。いずれにせよ原因物質と発生源の特定がまずは急務ですので、さらなる分析結果を待ちましょう。

今回の異臭騒ぎ、普通に生活をしていますと炭化水素と言われてもピンときません。ですが、メタンガス、プロパンガス、ブタンガス、ガソリンなどは日常用語になっています。これらはすべて炭化水素類で、化学の産物そのもの。このように、身の回りは化学物質や化学製品に囲まれているのです。

和田 眞