これらの化合物のうち、アクリロニトリル以外は、すべて炭素と水素からできている炭化水素と呼ばれる有機化合物です。大気中の濃度が高かったブタン、ペンタン、イソペンタンは、炭素の数が4個と5個の炭化水素で、ブタン、ペンタンは炭素が直線につながったもの、イソペンタンはペンタンの構造異性体(分子量が同じでも構造が異なるもの)です。
私たちに身近なガソリンは原油を沸点の違いによって分離することで得られ、常温においては無色透明の液体で、揮発性が高く臭気を放ちます。成分は炭素数4~10の炭化水素の混合物で、ペンタンやイソペンタンはいわばガソリンそのものと言ってもいいでしょう。
では、こうした化合物は身の回りのどんなところで使われているのでしょうか。まず、ペンタン、イソペンタンは沸点が常温から体温の範囲にあることから、遅効性の発泡剤として、たとえばシェービングフォームや発泡式冷却スプレーなどに利用されています。
また、フロンガス(オゾン層破壊物質)に代わって発砲スチロール(高分子化合物のポリスチレンを発砲させたもの、スーパーの惣菜トレイ、トロ箱など)製造の発泡剤や、接着剤や印刷用のインキなどにも使用されています。一方、ブタンは卓上ガス缶やライターなどに使われています。
ベンゼンは原油中にも含まれており、化学物質合成の原料として重要ですが、発がん物質で使用には注意が必要です。かつてガソリンの品質を上げる、すなわちオクタン価(ガソリンの質を表す指標)を上げるために、ベンゼンをガソリンに混入させていましたが、現在は行われていません。
アクリロニトリルは、アクリル繊維や合成樹脂の原料であり、また、かつては味の素の主成分であるL-グルタミン酸ナトリウムがアクリロニトリルから製造されていました。