筆者は、日本の財政は破綻しないと考えているので、景気を危うくしてまで緊縮財政を焦るべきではない、という点ではMMTと似ています。

しかし、それでも無理なく緊縮財政ができるなら、そうすべきだと思います。財政赤字が大きいと、インフレになった時にそれを加速するリスクがあるからです。

具体的には、10年後に少子高齢化で労働力不足が深刻化してからの増税は、失業を増やさないので、積極的に実施すべきだと考えています。その点については拙稿『増税は10年後に!「巨額赤字で財政は破綻する」が誤りである理由』をご参照いただければ幸いです。

MMTはインフレを起こす発火装置ではなく加速させる燃料

超金融緩和時の財政赤字というのは、大胆に単純化して言えば、政府が日銀から借金をして財政支出を行なうことですから、人々が大量の紙幣を持つことになります。もっとも、人々がインフレ懸念を持たなければ、その紙幣は老後のための貯蓄として銀行に預けられるだけで、インフレにはなりません。それが現状です。

ところが、人々がインフレを予想するようになると、「値上がりする前に買おう」という「買い急ぎ」の動きが出てきます。

財政支出を増税で賄っている場合には、人々がそれほど金を持っていないので、買い急ぎをしたくても少ししかできませんが、MMTの場合には人々が大量の金を持っていますから、大量の買い急ぎが出てきて大幅なインフレになりかねないのです。現金で持っていない場合でも預金を引き出せば良いので、同じことです。