人生100年時代といわれている現代社会において、定年は一体いつになるのか、老後資金はいくら必要なのだろうかと、いつかやってくる「老後」に対して不安を抱く人も多いのではないでしょうか。金融広報中央委員会実施の「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和元年)」によると、老後の生活に関して『心配だ』と感じている世帯は81.2%にものぼり、その理由として73.3%の世帯が「年金や保険が十分ではないから」をあげていることが分かります。
やはり老後の一番の不安材料はお金ということなのでしょう。二番目、三番目に多い理由を見てみても「十分な金融資産がないから」「現在の生活にゆとりがなく、老後に備えて準備していないから」と続いており、このまま老後を迎えてしまってお金は大丈夫なのかと不安感を覚えている人が多い現状が読み取れます。
今回は人生100年時代となった今、老後といわれる70歳に焦点をあて、70歳世帯がどのくらい貯蓄を持っているのか、また今問題となっている老後格差に苦しまないために今からできることは何かを考えていきましょう。
70歳の貯蓄額はいくらか
さて70歳世帯はどのくらいの貯蓄をもっているのでしょうか。先ほどの調査を元にみていくと、70歳以上の貯蓄額は平均「1,978万円」、中央値で「1,100万円」となっています。お金に関するデータを扱うとき、「平均値」と「中央値」をよく使いますが、平均値というのは一部の高所得者層のように桁違いのデータが入るとその値がぐんと引き上がってしまい、実態に即さないデータとなる可能性が高くなります。そこで貯蓄額などのお金に関する調査では、データを順番に並べたときに大体真ん中にくる「中央値」というものをよく使い、よりリアルな貯蓄額を表すようにしています。
さて、今回70歳以上の貯蓄額の中央値は1,100万円というデータが出ていますが、このデータは「金融資産を所持している世帯のみ」の数値です。金融資産とは、例えば現金・預貯金・株券・投資信託・債券・生命保険(掛け捨ては除く)など、実体を持たずとも資産として評価額を算出できるようなものをいいますが、注目して欲しいのは70歳以上に金融資産の有無を調査した結果「金融資産を持っている」が68.9%、「金融資産を持っていない」が31.1%にものぼるということです。
先ほどの貯蓄額の平均値・中央値でも金融資産を持っていない世帯を含めた統計となると、平均値が「1,314万円」、中央値が「460万円」となっており、金融資産を持っている世帯と持っていない世帯とで、大きく格差が出てしまっていることが分かります。