今回は、筆者の身近で起こった、とある「介護離職」の話を紹介したい。

「介護休暇・介護休業の活用を」「一人で抱え込まないで!」

そんなことはとうに承知、という当事者の話を聞くことができた。


「あと2年で定年なのに…」まさかの介護離職

まずはヒトミさん(仮名:58歳)のプロフィールから。

1年前まで大手メーカーの女性総合職としてバリバリ働いていた。元気だった父親が6年前に急逝した後は、認知症が進行する母親と二人で暮らしている。

車で10分ほどの距離に、6つ年の離れた専業主婦の妹が住む。妹夫婦と息子・娘が暮らす家は、父親が娘のために建ててやった一戸建て。

ヒトミさん自身は、仕事と介護の両立を断念し、定年を2年後に控えた最近、30年以上勤めた会社を辞めた。

「姉妹の仲は昔から悪かった」

姉妹で近居なら、ヒトミさんが一人で介護を背負う必要はないでしょう?と思いきや、姉妹は子どものころから折り合いが悪く、妹は成人後早々に家を出たのだという。その後結婚し、孫の成長を間近で見たい、という父の意向もあり、近居となった。

「妹は、小さい子どもたちを、じいじ、ばあばに預けてパートに出たり、夫婦でスキーに行ったり…。さんざん実家を利用してきたんですけどね。今はその子供たちも成人し、こちらとは完全に没交渉に。もう実家に用はない、といったところでしょう」

「父の葬儀で…」

姉妹の父は、足腰の衰えはあったものの晩年まで妻の介護に精を出していたが、自宅で突然亡くなった。「誤嚥性窒息」、吐しゃ物がのどに詰まったことが原因だった。ヒトミさんと母はたまたま別室におり、発見されたときは、すでに遅かった。まさに事故である。

そして、当時すでに絶縁状態だった姉妹の間に、さらなる溝が生まれる。きっかけは、家族葬で妹が放ったひとこと。