③ 謙虚さと思いやり
テレビで将棋の対局を観戦していると、対局終了後の棋士の表情だけでは、どちらが勝ったのか分からない、と感じることがよくあります。
相撲の土俵上で、勝ったほうの力士がガッツポーズをとることはタブーとされていますよね。将棋にも、それと同じ類の美学のようなものがあるのです。
将棋教室の多くで、最初に教わる3つの決まりごとがあります。
- 対局前は、「よろしくお願いします」とあいさつをする。
- 対局で負けたときは、潔く「負けました」と頭を下げる。
- 勝った人は「ありがとうございます」とあいさつをする。
「自分から負けを認めること」、「負けた人の気持ちをおもんばかること」。この2つ、大人でも苦手な人は多いでしょう。
我が子が小学生の頃に通っていた将棋教室では、自分が勝つとわかった瞬間にガッツポーズをした子たちは厳重注意を受けていました。そして、負けを認められず泣いたり、対局相手に悪態をついたりする子は、年齢が上がるごとに減っていったのが印象的でした。
ある程度の棋力になると、対局後に「感想戦」を行います。終わった一局を再現しながら、「ふりかえり」を行うのです。ここでは、勝者と敗者は平等です。
「この一手は失敗だった」と自分の指し手を反省したり、「これはいい手でしたね」と相手を称賛する、といったやりとりを通じて、謙虚な気持ちや相手への思いやりの心が生まれていきます。