今年7月6日、大分県臼杵市の高齢者施設で、湯冷ましの水が入っているやかんにスポーツドリンクの粉を溶かして作った清涼飲料水を飲んだ入所者13人に、吐き気や嘔吐の症状が出たとのニュースが流れました。

原因物質は後述のように推定されていますが、そもそもの原因は、毎日同じやかんで長期にわたって(10年以上と報道)お湯を沸かしたこと、そしてスポーツドリンクをそのやかんで作ってしまったことにあります。

この時どのような化学反応が起こっているのかに関しては、ほとんど知られていません。そこで本稿では、今回の事故発生の理由と、それに関連する科学(化学)について、できるだけ化学式を用いず言葉で紐解きたいと思います。

水を温めた時の化学反応。水あかはどうしてできるのか?

まず、少し長くなりますが水あかとは何かを明らかにしましょう。意外かもしれませんが、この話は、鍾乳洞の形成や日常の洗濯とも密接に関係しています。

水道水に含まれる代表的なミネラルはカルシウム(その他にナトリウム、マグネシウム、カリウムなど)です。カルシウムイオン(Ca2+)として存在しますが、正確には炭酸水素カルシウム(Ca(HCO3)2)として水に溶けています。

鍾乳洞ができるのは岩石中の炭酸カルシウム(CaCO3)の隙間に、二酸化炭素(CO2、炭酸ガス)を含んだ水が流れ、炭酸水素カルシウムとなって岩石が溶けるからです(反応1)。もちろんこれには長い年月が必要です。