これと同じで、家庭でやかんや電気式ポットの内部に溜まった水あかを溶かすには、台所にある酸性物質のお酢やレモン(クエン酸)を使います(反応3)。これはれっきとした化学反応です。
ちなみに、地球環境問題で話題になる酸性雨が、石仏の顔がぼけるほど溶かすことはよく知られたことです。これは、水あかを酸性物質を用いて溶かすことと同じ反応です。
やかんの水あか中毒の原因物質と、そもそもの原因
今回のやかんの水あか中毒のそもそもの原因は、水の煮沸(反応2)と水あかを溶かす(反応3)ことが偶然にも重なってしまったことにあります。
しかし、水あかが溜まるのは防ぎようがありません。問題なのは、反応3、すなわち水あかを溶かしてしまったこと、そして飲んでしまったことです。科学(化学)的知識があれば(そうは言っても難しいことですが)この事故は防げたかもしれません。
大分県食品・生活衛生課によれば、今回の“やかん食中毒”の直接の原因は、やかんの内部に付着していた水あかに、水道水に含まれる微量の銅が長期間にわたって蓄積し、それが酸性のスポーツ飲料と反応して溶け出したことだといいます。
ちなみに、飲まれたスポーツドリンクを調べたところ、1リットルあたり200ミリグラムの銅が検出されたとのこと。水道水の水質基準では銅は1mg以下となっているので、かなり高濃度であったことは間違いありません。ただし、銅以外の原因物質がなかったのかは不明で、詳細な分析が必要な気がします。