入学前から「この子が1人であんなところまで歩いて行けるの?」と心配していたそうなのですが、その不安が現実のものとなってしまったのです。

「我が家は、学区の一番端にあります。自宅があるところから峠を下り、向かい側の坂道を登り切った頂上に学校があるため、大人の足でもけっこうな時間を要する距離です。通っていた保育園から同じ小学校に行く子がいないので、近所に顔見知りのお友だちもいません。集団登校なども行われていないため、いきなり1人では難しいだろうと思い、入学前から登校の練習はしていたんですが…。それでも、やはり娘には過酷な登下校だったようです」

数週間通ったものの、間もなく新型コロナの影響で休校に。Tさんの子どもにとっては登下校の時間がごっそりなくなってうれしいことだったでしょうが、Tさん自身は学校再開後の不安が大きくなるばかりだったと言います。

「休校期間中も、お散歩がてら娘と一緒に登下校の道を歩くようにしていました。私と一緒に歩く分にはそれほどつらくなさそうで、通学していたときのような体の疲れもほぼない状態。けれど、学校が再開すれば重たいランドセルや荷物を抱えながら、この距離を歩く生活がまたスタートするので、娘の心が折れてしまわないかという心配はありました」

約1カ月の休校を経て、分散登校という形から小学生たちの学校生活がリスタート。ここから、Tさん親子の葛藤も新たなステージへと突入します。