長い年月の中で家庭内の立ち位置が変わっていくのを目の当たりにし、力で制圧させることの限界と力に頼るとまともな夫婦関係を築くことはできないことを痛感しました。母の気持ちも分からないではありませんが、嫌味の連続は聞いている周りの人間にとって喜ばしいものではありません。

現在、父は延ばしに延ばした退職後、全くの無趣味であるため1日中家で過ごす日々を送っています。そして、図書館や映画館に出かける母に電話をかける嫌がらせを始めました。

それ以外何もやることのない父は老け込み、母は一緒にいたくないので外出を続ける。筆者は、その愚痴を母から延々と聞かされるため、「子育てで忙しいから」と電話を切り、普段は距離を置くようになりました。

消耗させ合う夫婦生活を続けてきた筆者の両親は老境に入り、お互いを「生活を維持するための同居人」だと思っている様子。子の立場から見ると、理想的な老夫婦とはほど遠い状態です。

家庭内の現実は外から見てもわからない

今、筆者が毎日平穏に過ごせるだけで「幸せな家庭」だとありがたく思えるようになったのは、こうして驚くような反面教師ぶりを発揮してくれた両親のおかげと言えるのもしれません。

ある時、夫が自分の父母に関して「俺が子供の頃、派手にケンカすることもあったよ」と教えてくれることがありました。「あの温和なお義父さんが包丁出してきたり取っ組み合いのケンカとかしたの?」と返すと、「えっ?」と私の経験を察したのか、途端に顔を曇らせました。