流産を「そんなこと」扱いする実の母親

流産したことを母親に言っていなかった沼田さんは、その時ふと、自分の母ならこういう辛さをどう乗り越えるだろうかと気になったそう。そこで、母親に電話をし、勇気を出して流産したことを打ち明けました。すると、母親からの返答は意外なものだったそう。

「流産なんてよくあることじゃない。そんなことでくよくよしていてどうするの?子種があることは分かったんだから、また作ればいいじゃない。このままじゃ、お母さん、近所の人たちの孫の話に混じれないんだからね。」

自分の苦しみを理解してもらえなかったことだけでなく、亡き我が子を“そんなこと”という言葉であっさりと片づけられたことに沼田さんは深く傷つきました。「孫の顔を見たい、近所の仲良しグループからあぶれたくないという気持ちはわかります。田舎なので、狭いコミュニティーの中で暮らしていかないといけないから。でも、同じひとりの母親としてこの苦しみを理解してほしかった。」

実の母親から言われた言葉は今でも沼田さんの胸に見えない棘となって残っています。「あれから2年経ち、母親だけでなく、夫からもそろそろどうかと言われますが、また産んであげられなかったらどうしようと思うと妊娠に対して積極的になれません。正直言って、身ごもることも身ごもれないことも怖いです。」

妊娠・出産に対する周囲の反応は様々。産んでも産まなくても余計なお節介は寄せられるものだからこそ、沼田さんには自分が生きやすいと思える人生を選んでほしくなります。

古川 諭香