「騒動施策総合推進法(パワハラ防止法)」の改正によって、2020年6月より大企業を皮切りに、パワーハラスメント(パワハラ)の防止対策を講じることが義務となりました。

近年、働き方改革が推進されている一方で、ブラック企業による問題が後を絶ちません。劣悪な労働環境の職場では、パワハラが横行し、体力的にも精神的にも消耗が激しく、限界を感じている社員も多いと聞きます。

コロナ禍でテレワークを導入する企業が増えていることで、「ストレスが減って仕事がしやすくなった」と思っている人がいる一方、「緊急事態宣言の解除とともにテレワークもなくなり、業績悪化でより一層厳しい状況に陥ってしまった」という人も。

今回は、データを見ながらパワハラ問題の実態を読み解き、withコロナ時代のパワハラについて考えてみます。

上司のむちゃ振りに翻弄される部下

職場におけるパワハラとは、厚生労働省によると、「職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの3つの要素をすべて満たすもの」(※1)と定義されています。

パワハラに対して社会の目が厳しくなってきているものの、今もなお上司のパワハラに悩まされている人が多いのが現状です。

Aさんも、上司のパワハラに苦しむひとり。「上司自身が担当していた案件を、私に丸投げしてきたんです。それで『これは私の仕事ではないですよね?』と訊いたら、怒りが爆発して……」

上司は「君の成長のためにあえて仕事を割り振っているんだ!」と怒号を飛ばしたそうです。「私が成長するために…ということなので、やり方も何もかも『考えてやれ』ということなんでしょうね。フォローもサポートも一切ありませんでした」とAさんはため息をつきます。

またBさんは、テレワーク導入により上司の態度がきつくなってしまった、と嘆きます。「緊急事態宣言の発令とともに、テレワークに切り替わっていました。営業のサポート業務なので、テレワークになっても業務に大きな支障はありませんでした。ただ子供の通う保育園で登園自粛が要請され、育児をしながらのテレワークとなると全然捗りませんでした。仕事が思うように進まずにストレスが溜まり、さらに上司からは『コロナで大変な時に、仕事が遅い!』とテレビ会議で言われ、ほんとうに散々な時期でした。

テレビ会議も子供が映り込んでしまうので、本当は映りたくなかったのですが、上司からは『絶対に画面表示しろ』との指示がありました。また私の仕事が遅いのが原因だとは分かっているのですが、会議の頻度も上がり、監視体制が厳しくなってきました。

テレビ会議となると化粧をしなければならないし、男性社員の中にはスーツをきている人もいました。テレワークになったら少しは楽になるのかな…と思っていたのですが、なんだか出勤していた時よりもストレスが増えてしまった気がします。

今はテレワークはなくなり以前のように出社しています。子供が保育園に行ってくれているのは助かりますが、テレワーク中の私の働きぶりが気に入らなかったのでしょうか。上司の物言いがきつく、人前で大声で叱責されることも増えました」と、語ってくれました。