しばらく固まったままで反応のなかった筆者を、A氏はさらに強く抱きしめ、今度は頭をもたれかけながら、「松原さんがいとおしい…」と繰り返してきました。

そこで、「へぇ、そうなんですか。それはどうもありがとうございます。ところで、今日の打ち合わせの内容なんですけど…」と、できるだけ低い声でハッキリ聞こえるようゆっくりとした口調で言ったところ、A氏の腕の力がするすると緩んでいくのを感じたのです。

トボトボとうなだれた様子で目の前に座り、最初は下を向いていたA氏ですが、少し経つと何事もなかったようにこちらを見つめてきました。

まるで、こちらのほうが何か悪いことをしているような複雑な気持ちになりながらも、筆者もずっとA氏から目をそらさず、その日は打ち合わせを終えたのです。

A氏とのその後

打ち合わせを終えるときには、こちらからまた連絡することを告げました。ただ、今後はA氏と2人きりで会うのは危険だと考え、打ち合わせのときには従業員に事情を話して付き添ってもらう予定を立てていました。

…が、何度A氏に電話をかけても「ただいま電話に出ることができません」のまま。店舗に電話してスタッフに伝言しても、A氏から連絡をもらえることはなく、仕事の話もそのまま頓挫しました。