自分がセクハラの対象になっていると感じた瞬間、嫌悪感と憎悪がふつふつと湧いてきて、それまでA氏に抱いていた信頼感や尊敬の念が一気に打ち砕かれました。そして、「何? この小汚い、キモいオッサン…」としか思えなくなったのです。

悲鳴を抑えこまれる弱者

1階は店舗になっているので、そこで働いているスタッフだけでなく一般のお客さんも来店するというのに、抱きしめてくるという暴挙に出たA氏。

それでも、悲鳴を上げるという選択肢が頭になかったのは、1階まで声が届くかどうかわからないというだけでなく、A氏との取引のことがまだ頭の片隅にあったことは否めません。

部下や新入社員、そして筆者のように取引きしてもらう側など弱い立場にある人間は、セクハラ被害に遭っても簡単に声を上げられないことを実感しました。

そのとき、どう対処したか

「悲鳴をあげれば大騒ぎになる。でも、このキモいおやじにされるがままになるのだけは絶対にイヤ!」そう思った瞬間、自然とA氏の心理を分析し始めた自分がいました。そして、「うしろから抱きついてきたのは、後ろめたい気持ちがある」と踏み、できるだけ冷静に対処することにしたのです。