一方で、繰り下げ率は老齢厚生年金も老齢基礎年金も、概ね1%程度で推移しているようです。繰り下げ受給をする人は、意外に少なく100人に1人程度が現状のようです。

繰り上げ、繰り下げ受給する理由は?

次に、厚生労働省の「年金制度基礎調査(老齢年金受給者実態調査)平成29年」による「性別・本人の年齢階級別・本人の繰り上げ下げの有無及び繰り上げ受給に対する意識別受給者数」を見ていきましょう。

前項でも述べたとおり、繰り上げ下げ受給をしている人は多くはありません。当該調査も同様の結果が出ており、「繰り上げ下げ受給はしていない人」が全体の86%を占めています。繰り上げ受給をした人は全体の約12%となっています。

繰り上げ受給をした一番の理由は「減額されても、早く受給する方が得だと思ったため」が20%で最も多く、次いで「年金を繰り上げないと生活できなかったため」が16%となっています。次に「生活の足しにしたかったため」15%となっています。

「早く受給する方が得」と考えるのは、自分の寿命とも関係があるかもしれません。自分の寿命は誰にも分かりませんから、早めに受け取る方が得であると考えるのも理解できますね。

「年金をもらわないと生活できない」、「生活の足しにする」という理由は深刻です。定年後は収入を得る方法も限られますので、やむを得ず、繰り上げ受給した背景もありそうです。

年金の繰り下げは75歳まで可能?

現在、繰り下げ受給の上限年齢を現行70歳から75歳に引き上げる案が検討されています。この案が正式に決定すると、年金の受給開始時期は60歳から75歳の間で選択可能となります。