デジタルツールを駆使して長期海外出張を短縮化
一方、メーカーの典型的な出張として、ビザなしで現地滞在できる期間(たとえば3カ月)以内に現地工場(あるいは委託工場)のオペレーションを指導・改善するといった出張があります。
中小メーカーの場合、コスト削減と危機管理から会社が一軒家を賃貸し、入れ替わりで出張する複数の社員を共同生活させるという光景が見受けられます。出張者にとってはプライバシーもなく、かなりストレスのある現地出張かと思いますが、これはテレビ会議だけで回せるような任務ではありません。
ただ、コロナ危機後の将来は、日本本社と現地工場のデジタルツール完備により、現地出張の回数・日数・出張者数をある程度減らせる可能性はあるかもしれません。あくまでケースバイケースで検討が必要ですが。
また、海外で現地企業・機関などを相手に役務・コンサルティングサービスを提供するような長期出張の場合は、現場にいてこそできる仕事といった側面が強く、簡単にはリモートワークに転換できないでしょう。
それでも、相手側がテレビ会議などのデジタルツールを駆使したコミュニケーションに慣れてくれば、必要以上の日数を現地滞在せずとも相手側に安心感を与えつつ、円滑に業務を遂行することは不可能ではないと思われます。
コロナ危機の最中にいる今こそ、勝手にあきらめないで相手側に相談してみてはいかがでしょうか。案外、相手側も一部オンラインにしてくれた方が助かると密かに思っているかもしれません。
おわりに
コロナ危機後の日本で、昔ながらの「海外視察ツアー」や、目的意識がはっきりしない短期海外出張が復活を遂げるようなことがあれば、日本企業にそれだけ余裕が戻ってきた証で、ある意味、喜ばしい状態なのかもしれません。
ただ、いずれ長期的な世界経済低迷や日本企業の中国からの撤退、国内回帰の流れが起こる可能性もあります。”古き良き”海外視察や出張が戻るという、そんな夢のようなことはおそらく我々のニューノーマル(新常態)とはならないのではないでしょうか。
大場 由幸