ティア1は周辺部品各社とのコラボレーション、新規創造に期待

 足元は新型コロナウイルスで自動車需要の冷え込み懸念などが話題の中心になっているが、筆者自身の新型コロナ自粛体制前までの取材活動を振り返ると、19年内は各自動車関連技術にまつわる展示会やセミナー、19年秋口から20年初頭にかけては、トヨタ自動車グループを中心とするグループ企業各社への訪問取材などにあった。それらの取材活動を通じて感じたことは、自動車業界関連各社が100年に一度の大変革期にある危機感を抱き、自ら新規創造を模索し、周辺部品各社とのコラボレーションによる新規開発推進に意欲的であるということだった。各社インタビューから聞かれたコメントの数々を振り返りながら、新型コロナ後に広がる世界に思いを馳せてみよう。

第46回東京モーターショー2019で披露された電動化ビジョンを象徴するレクサス「LF-30」

“チーム九州”で魅力的なクルマ作りを志向するトヨタ自動車九州

 たとえば、レクサス車の主力生産拠点の一角を担うトヨタ自動車九州㈱は、18年10月に次世代事業戦略室を立ち上げ、19年1月から次世代事業室へと名称変更し本格始動。その目的はこうだった。

 「トヨタ自動車九州の強みを生かしたテーマで何がやれるか、地域と連携しながら勉強している段階だ。直近では、19年6月に福岡市天神の商業施設『イムズ』内にコワーキングスペース『GarrawayF(ギャラウェイ エフ)』を開設し、異業種の仲間づくりを進めながら、未来のモノづくりやモビリティーを一緒に考えるプログラムを開始し、種々実証を進めている」(取締役副社長 馬場貞仁氏)

 そして、産官学各社との交流の必要性、共に歩む姿勢を示唆している。

 「自動車生産は当社の力だけでは成し得ない。九州現地のティア1や部品メーカーなど仕入先57社と『九愛会』を組織して品質、物流、人など課題をお互いに議論したり、行政・研究機関や地元ITベンチャーとの交流を通じ、九州の力もバネにしながら魅力的なクルマ作りを志向している。まさに『チーム九州』だ。たとえば九州にはスタートアップ企業が育っているが、どこでその技術を活かせるのか見えていない企業も多い。そこで、地元のスタートアップ企業6~7社と当社の技術員が交流し、商機を見出したり、当社の技術員はそのスピード感と発想の豊かさに刺激を受けたりとWinWinの関係が構築できたりしている」(馬場氏)

 一方、ティア1各社も同様に、新たな使命への強い意識と、各社とのコラボレーションの必要性を力説する。