新卒一括採用がない海外は「空き」狙いの就職
筆者は欧州・南米で働いた経験がありますが、新卒採用制度は一切と言っていいほどありませんし、新卒をありがたがることもありません。基本的に企業は何らかのポジションに「空き」があれば、そこを埋める人材を探すということになります。
欧米企業が新卒社員を歓迎しない理由は以下のように明白です(欧米企業が正しいと言っているわけではなく、普通の企業経営者ならそう思うという理由です)。
- 新卒社員はスキルがなく、教育コストが必要なので当初は採用企業に過大な負担となる(お辞儀の仕方、名刺の渡し方まで教えるのは日本企業くらい)。
- 退社リスクが大きい。経験上は3年以内に約半数が3割が辞めるのが実情(日本の場合は3年以内に3割。厚生労働省:新規学卒就職者の離職状況(平成27年3月卒業者の状況)参照)。
- すぐに営業収益をもたらす人材が少ない(大企業では、新人は売上に直結する営業部門だけではなく、経理・人事や総務関連などの管理部門にも配属されるため、売上に直結する新入社員は少ない)。
- そもそも新卒を採用する必要がない(労働市場に流動性があり、即戦力の転職者を採用しやすい)。
そのため、学生は卒業してすぐ就職ということは稀で、企業にアルバイトやインターンで潜り込んだり、ひたすら履歴書を書き送ることになります。
ただ、アイビーリーグのような一流大学の学生であれば、学部や院の卒業が近づくと企業側から声がかかることもある、といった格差があったり、就職が決まるまで学生ローンの返済に苦しむという問題があるのも事実です。
「集団」から「個」へという時代の流れ
思うに、令和の時代、残念ながら「〇〇会社はこうした理念で社員を育てる」という、古き良き時代には当たり前のように受け入れられていた”スローガン”が成り立たないのです。
なぜなら、個々人の多様性を尊重するように変化してきている今は、一括採用の新入社員という「集団」よりも、「個」を認めて、その「個」を伸ばさなければ企業も成長しないと考えるからです。”スローガン”は、いわば会社の宣伝です。敏感な学生はそれが本当かどうか見抜いている気がします。