コロナショックで株式市場は大荒れですが、毎月投資の「つみたて投資層」はどうやりすぎしているでしょうか。iDeCo(イデコ)やつみたてNISA(ニーサ)がつみたて投資では制度として活用されていますが、今一つ口座開設やその利用者数は伸び悩んでいます。

株式市場は暴落や暴騰を繰り返していますが、今回はあらためて投資信託の使い勝手やインデックスファンド(インデックス投信)の使い方についてのポイントをまとめてみました。

iDeCoやつみたてNISAの口座数はわずか

「イデコやニーサ」というのをよく耳にするようになったという人も多いでしょう。では、どれくらいの人が活用しているのでしょうか。

たとえば、iDeCoであれば、国民年金連合会(iDeCo公式サイト)によれば、その加入者数は2020年1月末では約143万人。さて、この人数、多いのでしょうか、それとも少ないのでしょうか。

厚生労働省の「平成29年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、公的年金被保険者数が6733万人であることを考慮すると、非常に少ない割合といえます。iDeCoを始めている人がマイノリティともいえますし、金融機関やFP(フィナンシャルプランナー)が騒いでいるわりには、制度そのものが十分に認知されていないともいえます。

では、つみたてNISAはどうでしょうか。金融庁によれば、2019年12月末時点で、約189万口座。こちらもNISA口座を開設できる人数を考えれば、iDeCo同様にそれほど多い口座数というわけではありません。

政府、金融機関、FPが「iDeCoだNISAだ」と太鼓をたたけど、国民が躍らないのはなぜなのでしょうか。

金融機関も毎年、相当広告宣伝費を費やしていると思います。それがゆえに認知度も上がりつつあるとは思います。

しかし、先に見たように制度を活用している人はそれほど多いとは言えません。実は、iDeCoもつみたてNISAもインデックスファンドを中心とした制度となっています。

いろいろな個人投資家と話をすると、意外にも多くの人が好いといっているはずのインデックスファンドの使い方がよくわからないといいます。

メディアや書籍などでは「とりあえず目をつぶってインデックスファンドを買っておけばOK」というようなトーンですが、その部分ですでに個人投資家は困っているのです。以下に、そのポイントをあげていきたいと思います。

インデクスファンドは実は使い方が難しい金融商品

それでは、インデックスファンドが初心者にとって使いにくい理由を見ていきましょう。

【その1】どのインデックスが正しいかわからない

インデックスファンドと一口に言っても、その運用対象である「インデックス」、つまり投資対象の基準となるベンチマークは様々。一部の例を挙げても以下の通りです。

  • TOPIX
  • 日経平均225
  • S&500
  • ダウ工業平均株価
  • ナスダック
  • MSCIコクサイ(Kokusai)
  • MSCIワールド(World)
  • MSCI オールカントリーワールドインデックス(ACWI)

多くの個人投資家は、そもそもインデックスの意味も分からないし、どの国や地域のインデックスを選んでよいのかわかりません。

日本のインデックスファンド信者が好きなのが「MSCIコクサイ」。では、このベンチマークに含まれる国が何カ国含まれているのか、また、どのような地域が含まれているのか、米国株の比率はどれくらいかを言える人はどの程度いるのでしょうか。

もっとも、運用会社が「とりあえずMSCIコクサイのインデックスファンド作っておけばよいよ」というスタンスもあったかもしれませんが、グローバル、外国株式の投資信託のベンチマークがMSCIコクサイとなっています。必然、日本のインデックスファンド信者の投資先としてMSCIコクサイが多くなっているという傾向があります。

ただ、最近は「MSCIコクサイ」疲れで「MSCI ACWI」を投入する運用会社も出てきました。投資家としては選択肢が増えてうれしい限りですが、果たして新興国の比率がポートフォリオ全体での比率がどの程度かを知っている人がどれくらいいるのでしょうか。信託報酬の水準を考えれば、MSCIコクサイやMSCIワールドでもよかったとも言う人も出てくるでしょう。

実は機関投資家でもどのベンチマークを選択するのかに時間をかけています。その最も重要なベンチマーク選びを「とりあえずMSCIコクサイのベンチマークのインデックスファンドを買っておけばOK」という適当なアドバイスをしている書籍やFPを見ると大変残念な気持ちになります。個人投資家のことをちゃんと考えていないなと。

また、よく目にするのが、「米国のインデックスファンドを買っておけばよい」という意見です。過去のパフォーマンスを見れば、その判断で正しかったといえますが、この先もそれでよいのかわかりません。

新型コロナウイルスの影響は日本国内よりも海外、特に米国や欧州といった国や地域の影響の方が大きそうに見えますが、果たしてこれまで通りの投資先でよいのでしょうか。また、過去の株価パフォーマンスだけで将来を判断してよいのでしょうか。

実は、米国株式のインデックスファンドを選択するという行為自体が、「世界株式の中から米国株式を選択するというアクティブな行為」を個人投資家にさせていることになります。

グローバルの株式投資を実際にしたことがある投資家ならわかるのですが、各国の株式の比率を考えるのも非常に重要な行為です。

こうした重要な点を無視して、「インデックスファンドを買っておけば資産運用はOK」とか「米国のインデックスファンドを買っておけばOK」というように、インデックス投資のポイントを無視した指摘で、そして個人投資家が十分に理解しないまま投資をはじめさせるようにアドバイスをするのは無責任だと思います。

【その2】複数資産のインデックファンドの組み合わせ自体がアクティブ運用

二つ目のポイントですが、資産配分、アセットアロケーションについてです。

  • 株式比率が60%、債券比率が40%のポートフォリオ
  • 株式比率が40%、債券比率が60%のポートフォリオ

さて、上記のどちらのポートフォリオが投資家にとっては正しい資産配分でしょうか。

株式と債券のインデックスファンドを進める人もいるのですが、実はその人たちは、インデックスファンドは販売手数料(買付手数料)が無料で、信託報酬も安いからという理由だけですすめていることも多いです。問題はその先にあります。

一体、株式と債券の比率をどう保有すればいいのかにはほとんど答えてくれていません。実は、この比率を決める作業はアセットアロケーションといって、プロ投資家でもある機関投資家でも非常に難しい作業です。その資産配分を、個人投資家に丸投げで、お好きのどうぞといっているのです。

これから資産運用を始めようという個人投資家に、その作業を丸投げ、「自己責任の原則」よろしく、それで運用をはじめましょうといっているのです。資産配分を決めるということ自体が立派なアクティブ運用なのです。

ちょっと勉強を始めだした、運用に興味を持ち出した人が、株と債券の違いを知り、この問題に直面した時どうすればよいのでしょうか。

ロボットアドバイザーのように限定された質問に答えるだけで資産配分を決めてくれるというサービスも出てきていますが、まだ実績の期間が短く評価が難しいといわざるを得ません。

インデックスファンドを買っているから、インデックスに投資をしているという安心感はあるかもしれませんが、複数資産のインデックスファンドを買った時点でアクティブ運用の海に放り込まれているというのは何とも皮肉です。

自分で気づけばよいですが、実は気づいていないという人も多いというのが実態で、ここもインデックスファンドを進める人たちは真摯にメッセージを出した方がよいでしょう。

【その3】インデックスファンドはインデックスに必ず負ける

インデックスファンドはインデックスに信託報酬分だけ「必ず」負けます。そして長期投資をすればするほどその「負け幅」は広がります。これはインデックスファンドを強力に推しすすめる人たちは「当たり前だろ」というのですが、実際は必ずしも皆納得しているというわけではありません。

個人投資家の多くは、時間がたつにしたがってその事実に気づき、そしてそのパフォーマンスを見て残念な気持ちになります。なんだ結局負けるのかと。

インデックスファンドとは、費用を払いながらインデックスに「確実に」負けることにお金を払っていることになります。なんというゲームでしょうか。

当然、それでもいいじゃないかという人もいますが、実はインデックスファンドを保有しながらアクティブファンドもしっかり投資をしているという人も多いのも実際です。みんながみんな、インデックスファンドだけでOKと思っているわけではないということが分かります。

日本に足りていないインデックスファンドを評価する文化

「インデックスファンドならとりあえずOK」という風潮は少なからずあります。では、インデックスファンドをよりよく活用するためには何が必要なのでしょうか。

それは、個別のインデックスファンドの評価です。

では、投資信託はどのように評価すればよいのでしょうか。

まず、トラッキングエラーを評価するということがあげられます。インデックスファンドの目的はベンチマークとのずれ、つまりトラッキングエラーを最小化させることです。このずれが小さい分だけ評価されるべきです。もっとも信託報酬分は最終的にずれるのですが…。

そしてもう一つは、インデックスファンドとベンチマークの動きの連動性です。ベンチマークが下がっているときに上がってはいけませんし、下がっているときに上がってはいけません。インデックスファンドはインデックにパフォーマンスで勝ってはいけないのです。そして負けてはいけないのです。本当は非常に難しい金融商品です。

こうした2点を厳密に評価したうえで、最終的にどのインデックスファンドが良いかを選択できるような環境が来ると個人投資家もハッピーになるのではないでしょうか。

もっとも、これまでトラッキングエラーでインデックスファンドを評価する筋にはお目にかかったことがないので、まだインデックスファンド界隈も道半ばというところです。

マネー編集部