しかし、医療関係機関向けを優先したという事情はあるにせよ、一般消費者向けの品薄状態は全く解消されていないのは明らかです。菅官房長官の楽観的な見通し発言が、政府に対する国民の信頼度を大きく下げたことは否めません。

また、安倍首相は2月29日に行われた一斉休校に関する臨時記者会見において、記者からの質問に答える形でトイレットペーパーには十分な在庫があることを強調しています。業界団体のみならず、こうした政府中枢による品薄否定発言が逆に火に油を注いだ可能性もあるでしょう。

高齢者は47年前のトイレットペーパー不足問題の再燃を懸念?

もう1つのトラウマは、第4次中東戦争の影響(原油価格高騰)により、同じトイレットペーパーの不足が大きな社会問題となった47年前(1973年)の買い占めです。

現在の50歳代前半未満の方々にはピンとこないと思われますが、60歳代以上の方々、とりわけ、70歳代以上の高齢者には今でも強いトラウマとして残っていると考えられます。

筆者も当時のトイレットペーパー不足をリアルタイムで経験したわけではありませんが、今般の事態を上回る狂乱だったと推察されます。私事で恐縮ですが、80歳台半ばの筆者の母親も、真っ先にオイルショック時の大混乱が脳裏をよぎったと言っています。

当時はまだインターネットなど全くない時代でしたが、今回と同じように、本当に些細なきっかけで深刻な品不足が起きました。あの時にパニック状態に陥ったトラウマが残る高齢者が、今回も必要以上にトイレットペーパーを購入したとしても、何ら不思議ではありません。

筆者の気のせいかもしれませんが、ニュースで見る限り、ドラッグストアに並ぶ消費者には高齢者が多いようにも見えます。