「え?8月の年金、なんだか減ってる?」
「先月より多い気がするけど、なぜ?」
8月の年金支給日には、こうした声がちらほら聞こえてきます。
実は、8月支給分から年金の「手取り額」が増減する人がいるのです。厚生年金・国民年金のどちらを受給していても、影響を受ける可能性があります。
「年金そのものが変わったわけじゃないのに、なぜ?」
本記事では、その理由や実際に変わる人の特徴、確認方法まで、わかりやすくご紹介します。
1. なぜ8月?理由は「住民税や保険料の天引き額」が変わるから
年金の支給額(いわゆる“額面”)は毎年4月(実際の振込は6月)に見直されますが、8月に変わるのは「手取り額」、つまり実際に振り込まれる金額です。
この手取り額に影響するのが、住民税や保険料の特別徴収(=年金からの天引き)です。
住民税や保険料は前年の所得などをもとに6月ごろに新たな納めるべき金額が決まります。
通常は、10月の年金支給分から反映されるしくみですが、8月に反映される自治体も。
そのため、前年より住民税や保険料が上がった人は8月から天引き額が増えて手取りが減り、逆に下がった人は手取りが増える、ということが起こるのです。
2. 住民税はどう確認する?
住民税の増額・減額により手取りが変化するとお伝えしてきましたが、では自分が支払う住民税の税額はどこで確認すればよいのでしょうか。
その額を知らせてくれるのが、毎年6月ごろに届く「住民税決定通知書(正式名称:特別徴収税額の決定通知書)」です。
この通知書は、前年の所得をもとに計算された住民税の金額や徴収方法、期間などが記載されています。特に年金から住民税が天引きされている方にとっては、10月(または8月)からの振込額の変動を左右する重要な書類です。
2.1 通知書が届くのは毎年「6月」頃
住民税決定通知書は、毎年6月上旬から中旬ごろに市区町村から発送されます。(市町村によって発送時期は異なります)
前年(1月〜12月)の所得をもとに計算された住民税の金額がこの通知書に記載されており、その年の6月~翌年5月分の住民税額が決まります。
この通知書の内容は、8月支給分以降の年金振込額(手取り)に直接影響するため、年金生活者にとっても見逃せない重要な書類です。
2.2 誰に届くの?送付対象者はこの人たち
住民税の決定通知書は、以下のような方に送られます。
- 前年に一定の所得(年金や給与、事業収入など)があり、今年度の住民税が課税される人
- 年金からの住民税天引き(特別徴収)対象となっている人
- 自分で納める(普通徴収)方式になっている人
なお、住民税が非課税の場合も、「非課税証明書」や「課税・非課税通知書」として通知される自治体もあります。制度の詳細は市区町村によって異なるため、心配な方は役所へ確認してみると安心です。
2.3 どこから届く?どんな封筒?
住民税決定通知書は、住民登録している市区町村役所からの封書で届きます。
封筒には「市民税・県民税通知」「特別徴収税額の決定通知書」などと書かれていることが多く、ほかの書類に紛れてしまいやすいのが注意点です。
また、住民税の納税方法によって内容や書式が異なります。
特別徴収(年金から天引き)
天引き金額・期間・月別内訳など 日本年金機構にも同時に通知され、10月(または8月)からの振込額に反映されます。以下が特別徴収の住民税決定通知書のサンプルです。
普通徴収(自分で納付)
年間税額・納付期限・納付書などの形式。
自分で支払う必要があるため、納付書が同封されるケースも多いです。
2.4 通知書が来ない・なくした場合はどうする?
住民税決定通知書が届いていない、あるいはうっかり処分してしまった場合でも大丈夫です。
お住まいの市区町村の「住民税課」や「市民税課」に申し出れば、再発行や内容の確認が可能です(※本人確認書類が必要です)。
また、住民税が非課税の場合は通知が省略されることもあるため、制度上送付がないケースもあります。
2.5 通知書の到着=手取りチェックの合図
6月に届く住民税決定通知書をチェックしておくことで、8月から年金の手取り額がどう変わるのか、ある程度見通しを立てることができます。
「前年より収入が増えた」「医療費控除をした」「家族の扶養状況が変わった」など、生活に変化があった方は特に要注意。手取り額の変化に驚かないためにも、通知書を受け取ったらすぐに目を通しておきましょう。
しかし、見方はわかっても、自分があてはまるかどうかイメージしにくい方も多いのではないでしょうか。
次章では、手取りが減った人・手取りが増えた人のケースを具体例で紹介していきます。
3. 実例で見る8月から「手取りが減った人」のケース
8月の手取りが減った人にはどんな傾向があるのか、具体例を見ていきます。
3.1 ケース1:パート収入が増えた
70代・厚生年金受給中のAさんは、昨年パート収入が年間130万円に。
住民税の課税対象となり、今年8月から年金からの天引きがスタート。月々の手取りが約2000円減少してしまった。
3.2 ケース2:一時的に所得が増えた
65歳・国民年金のBさんは、昨年定期預金を解約し一時金として50万円の利子収入が発生。
住民税が増え、8月以降の手取りがやや減少。
3.3 ケース3:配偶者控除が外れた
前年に配偶者が退職していたCさんは、扶養対象から外れ、住民税がアップ。
8月からの年金振込額が3000円近く下がった。
3.4 まとめ
一時的にまとまったお金を得た人
→ 退職金、満期保険金、預金の利息などが課税対象になることがあります。
扶養の対象が変わった人
→ 家族の扶養から外れた、あるいは誰かを扶養から外した場合、控除が減って住民税が上がることがあります。
心当たりがある方は、前章で紹介した住民税決定通知書を確認してみるとよいでしょう。
4. 一方で「増える」人とは?実例で紹介
手取り額が減る人の例を紹介してきましたが、一方で手取り額が増える場合もあります。こちらは、住民税の負担が軽くなったパターンです。
4.1 ケース1:パートを辞めて非課税世帯に
68歳・厚生年金のDさんは、昨年パートを辞めて所得が減少。
住民税がゼロになり、8月支給分から天引きがなくなって手取りが月5000円近くアップ。
4.2 ケース2:医療費控除で住民税が軽減
C型肝炎治療に多額の費用がかかったEさんは確定申告で医療費控除を申請。
住民税が下がり、年金手取りがやや増加。
4.3 まとめ
収入が減った人
→ パートを辞めた、退職したなどで前年の所得が少なくなった場合、住民税が減るか、非課税になることもあります。
医療費控除などを申告した人
→ 確定申告で医療費控除や寄附金控除をしたことで、課税所得が下がっている可能性があります。
非課税世帯になった人
→ 所得の減少により、今年から住民税がかからなくなった場合は、天引きがストップします。
5. 厚生年金・国民年金、どちらでも起こり得る
8月の手取り額の変動は、厚生年金・国民年金どちらの受給者にも起こり得ます。
ただし、年金額の大きい厚生年金受給者の方が住民税の課税対象になる傾向が強いため、変動の影響を受ける可能性はやや高めです。
また、年金を複数受給している方(例:老齢厚生年金+老齢基礎年金)は、合算額で課税対象となるかどうかが決まるため、その点にも注意が必要です。
5.1 自分が該当しているかどうか確認するには?
「私の振込額、なぜ変わったの?」と思ったら、まず以下の書類を見てみましょう。
- 住民税決定通知書(6月ごろに市区町村から届く)
- 年金振込通知書(年金機構から年2回:6月・10月頃に届く)
- 前年の収入がわかる書類(源泉徴収票、確定申告書など)
これらを確認することで、住民税の増減が手取り額に影響しているかどうかがわかります。
6. 4月の年金改定とは違う動きなので注意
「年金の支給額って毎年4月に変わるはずなのに、どうして8月に…?」と思った方もいるかもしれません。
ここで重要なのは、4月の年金額改定(制度による額面調整)と、8月の手取り額変動(税金の影響)は別物だという点です。
年金の受給額は毎年見直しが行われており、2025年度の年金額は1.9%増額となりました。2025年6月13日(金)に増額改定分の初回支給が行われています。
4月に変更されるのは制度上の支給額、8月に変わるのは個人ごとの住民税による手取り額。似ているようで、全く異なる理由で変化しています。
7. まとめにかえて:手取り額の変化は「前年の自分の収入」がカギ
年金の支給額が変わったわけではないのに、振込額が上下する。その理由は、多くの場合前年の収入や所得によって変わった住民税の天引き額にあります。保険料も同様です。
もし「急に減った」「なぜか増えた」と感じたときは、通知書や前年の収入を確認してみましょう。
不明点がある場合は、市区町村の税務担当窓口や、年金事務所に相談することをおすすめします。
参考資料
- 日本年金機構「年金振込通知書」
- 総務省「納税義務者用の特別徴収税額決定通知書の記載内容の秘匿」
- 日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
- 厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」
マネー編集部年金班
