このように「○○ちゃんママ問題」への感じ方が大きく分かれるのは、ママたちの「アイデンティティの揺らぎ」の起きやすさに個人差があるからではないか、と筆者は考えています。
「アイデンティティの揺らぎ」が少なく、母である自分とこれまでの自分をほどよく切り分け、どちらも“私”だと受け入れられる人にとっては、「○○ちゃんママ」は特に抵抗を感じる呼び名ではないのかもしれません。
自分が自分でなくなるような危機感
子どもを産んで育てるというのは、女性にとって世界を一から組み立てなおしていくようなインパクトのある出来事。さらに妊娠中から産後しばらくの間は、“母”という不馴れな立場でさまざまな決断や行動をしなければなりません。
そんな未知の世界を手探りで歩んでいるさなかにかけられる「○○ちゃんママ」という呼び名。「アイデンティティの揺らぎ」を起こしやすいタイプの人であれば、ゆっくりと母という“役割”に染められていく感覚に、自らのアイデンティティの危機を感じることもあり得るでしょう。
──ママである自分と、ママじゃない自分。どちらも自分のはずなのに、ママじゃなかったこれまでの自分がどこかへ消えてしまいそう…。
子育てをすることは、ある意味、自分が信じる “正しさ”や“価値観”をリレーのバトンのように我が子に手渡していく作業。足元がしっかりしていないと、たちまち不安に包まれてしまいます。どうしたら自分を見失う不安にかられることなく、「ママとしての私」と折り合いをつけることができるのでしょうか。