このように、悔しいですが、人々が欲張りであることを利用する方が、経済はうまく行くのです。

冷たい頭脳で経済を考える訓練をさらに続けたい人は、拙稿『人々が欲張りな方が経済はうまく行く。強欲商人でさえも役に立つ』をご参照ください。江戸時代に、凶作の年を狙ってコメを買い占めた強欲商人がいましたが、彼らでさえも経済活動の一員として貢献していた、という話です。読むと温かい心が邪魔をして腹が立つと思いますが(笑)。

政府が配給制を採用するという選択肢も

経済学の祖であるアダム・スミスは「神の見えざる手」を重視し、政府は経済活動に介入すべきでない、という基本姿勢を採りました。上記のように「転売規制をすべきでない」という主張をしたわけです。

もっとも、マスクの場合には、マスクが入手できない人がいると新型肺炎が流行してしまうというリスクがありますから、政府が介入するのも選択肢かもしれません。マスクを政府が買い上げて、国民に「配給」するのです。

アダム・スミスが本気で怒りそうな政策ですが、流行が日本でも本格化して、マスクが本当に入手困難な状況になった場合には、検討の余地があるかもしれません。政府関係者には、頭の片隅に入れておいていただきたい選択肢ですね。

ある程度の利益は転売屋に認めるべき

小売店にとっては、マスクの大量仕入れはリスクです。新型肺炎の流行が終わればマスクの需要が激減するでしょう。人々は買い置きのマスクがあるので、当分マスクを買わないでしょうから。

そんな中で、小売店がマスクの仕入れに慎重になり、店頭で品切れが相次ぐようなことになれば問題です。さらに問題なのは、日本の小売店が仕入れない分を外国の小売店が仕入れてしまうことです。