それにより、人々は2枚のマスクを入手することになります。不満は残りますが、とりあえず感染の恐怖が和らぎますし、世の中全体としても新型肺炎の流行を予防することができるでしょう。

そんな時に、高値転売を禁止してしまったら、先に10枚買った20人だけがマスクをして、残りの80人はマスクなしで生活することになります。不安でしょうし、罹患するかもしれませんし、罹患したら他の人を罹患させてしまうかもしれません。つまり、新型肺炎が流行してしまうかもしれないわけです。

もしかしたら、持病があって「何としてもマスクを買いたい」という人がマスクを買えないかもしれません。それは、転売屋がマスクを大量に買ったからではなく、転売が禁止されている場合ですね。

転売が認められれば、その人は高い値段で転売屋からマスクを買うので、不愉快ではあるでしょうが、最悪の事態は避けることができるはずですから。

経済がグローバル化していることに要注意

日本人の常識と倫理観では、マスクの高値転売は悪いことなのかもしれませんが、世の中には異なる常識と倫理観を持った人も大勢いるはずです。たとえばA国の人々は、転売して儲けることは全く問題ない、と考えているかもしれません。

そうだとすると、条約で転売を禁止することはできないでしょう。そんな時に日本だけ転売禁止法を作ってしまったら、A国の転売人が日本で大量にマスクを買い、A国で高値転売して儲けることになるでしょう。

経済がグローバル化していなければ、日本人が200枚のマスクを使うことができたのに、グローバル化した経済では、そもそも日本人が使えるマスクが減ってしまうのです。これは、ぜひとも避けたい事態ですね。