老舗洋菓子チェーン店モンブランが、2018年に事実上の経営破綻。神戸市を代表する洋菓子チェーン店として知られており、神戸市を中心に17店を運営していました。帝国データバンクによると、負債額は約3億2800万円となっています。
17年に2店、18年に1店オープンするなど積極的な経営をしていましたが、既存店の売り上げの伸び悩みと新規出店のコスト増が破綻の原因とされています。
しかし神戸市の地場産業である洋菓子を扱い神戸市中心に店舗展開していたことから、破綻の背景には神戸市そのものの3つの問題点ともいえる「影」を見る事ができるのではないでしょうか。今回はその3つについて見ていきます。
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モンブランの経営戦略と神戸市の闇
モンブランは、1963年に創業した洋菓子製造販売業者です。神戸市や明石市、加古川市などに店舗を展開し、生ケーキ「至高のモンブラン」や焼き菓子「お・も・て・な・し半熟チーズ」を販売していました。
2010年にはスイーツカフェバーを出店し、百貨店の催事販売に力を入れるなど販売を多角化。15年6月期には売上高6億6500万円を計上していました。
しかし神戸市には洋菓子店が多いため競争が激しく、さらに原材料費の高騰や出店に伴う借り入れ負担などにより赤字決算が頻発。債務超過の状態が、長く続いていました。
そのような状態でも積極的に出店は続けましたが、既存店の売り上げが芳しくなく18年6月期の売上高は5億2100万円に減少。さらに当期損失3100万円を計上し、資金繰りの悪化により経営破綻となってしまいました。
米中貿易摩擦を契機に世界経済に陰りが見え始めていますが、これまでの日本経済は良好な世界の景気動向を背景にまずまずの景気状態が続いています。
ただし既に人口減少がスタートしている日本では、特に地方経済はそれ程景気回復の恩恵を受けることなく現在に至っています。
一方で大都市圏は地方からの人口流入もあり、好景気の恩恵を受けている状態です。しかし神戸市に限れば、下記の3要因により大都市の中でも厳しい状態に置かれています。
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①阪神淡路大震災の後遺症
阪神淡路大震災は1995年1月に発生し、20年以上の時が経過しました。しかし震災により地場産業が大きな影響を受け、現在も復興できていない分野も少なくありません。
長田区の新長田商店街の賑わいが今も戻らない事は知られていますが、ケミカルシューズなどの地場産業も震災を機に一気に落ち込んでしまいました。
日本ケミカルシューズ工業組合によれば、震災前の94年の生産額は660億円でしたが、震災直後の95年は285億円へと大幅下落。2001年は514億円と、震災前の8割近くになっています。
ケミカルシューズのみならず洋菓子、真珠加工、日本酒といった神戸市の地場産業全体が市場縮小の影響を強く受けている面がありますが、震災で一気に落ち込んだ影響も否定できません。
②人口減少
神戸市は15年の国政調査から、政令指定都市の人口ランキングで5位の座を福岡市に譲り渡しています。その後の人口減少は著しく、同ランキング10位以内でもっとも減少率が高くなっています。
神戸市は特に北区や西区、須磨区といった郊外の人口減少が続いています。郊外の山を切り開いて団地を造成した神戸市ですが、団塊の世代の引退により既に団地の空き家が目立ち始めています。
さらに大阪市に人が吸い寄せられる形で、他の大都市に比べると人口減少ペースが速いです。神戸市は大都市の中でも人口減少が進んでおり、都市としての基礎体力が徐々に落ちている状態と言えます。
③限られたインバウンド消費の恩恵
関西圏では、大阪市と京都市は訪日外国人観光客によるインバンド消費の恩恵を強く受けています。京都市の観光地や大阪市の繁華街は休日のみならず、平日も訪日客で非常に賑わっています。
一方神戸市は、以前に比べると訪日客の姿を見かけるようになったものの大阪市や京都市に比べるとその数は少なく、インバウンド消費の恩恵も限定的です。東京都に対する神奈川県横浜市の様なポジションにうつるかもしれません。
神戸市は1868年の開港で、国際港湾都市となりました。外国人慰留地を通じて西洋文化を取り入れ、洋菓子を始めアパレルや神戸洋家具などの地場産業が発展していきました。洋風の港街としてのブランドを有する神戸ですが、インバウンドの観点ではそのブランドの活用は困難な状態となっています。
神戸市北区に所在する「有馬温泉」は訪日客で賑わっているものの、インバウンド需要効果は大阪市や京都市に比べて限られていると言えるのではないでしょうか。
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行政は様々な施策を打ち出しているが・・・
震災の影響からいち早く人口減少が見込まれていた神戸市の行政は、「医療産業都市構想」を打ち出すなど震災復興事業に取り組んできました。
しかし人口減少スピードは予想以上に早く、神戸市の活力を浸食しています。
モンブランの破綻は個別企業の事情はあっても、洋菓子を地場産業としている神戸市の街としての活力低下を象徴する出来事ともいえます。
神戸市は三宮駅の再開発や積極的なベンチャー企業の誘致、阪急神戸本線と神戸市営地下鉄西神・山手線の相互直通運転の検討、長田区への一部庁舎移転など積極的な活性化策を打ち出しています。これらの施策が神戸市を活性化して、活気ある神戸市の再興に期待したい所です。
参考資料
神戸市「神戸の地場産業について」
神戸市「神戸市の人口の現状と将来シミュレーション(神戸人口ビジョン(案))」
石井 僚一