「義実家」が完全に味方
夫の不倫は、実母には相談しなかった。いわゆる、昭和の良妻賢母を地でいく女性だったので「あなたにも悪いところがある。きっと家庭の居心地が悪かったのだ」と言われるのが目に見えていたからだ。
離婚を見据え、義理の両親を交えて家族会議を開いた。そこで義母は泣きながら意外な言葉を口にした。
「こんなに子どもに愛情を注いで育児をがんばる素晴らしいお嫁さんは他にはいない。私の息子の育て方が悪かった。こいつを一緒に追い出そう」
私も涙が出た。夫の中では、誰も自分の味方がいないこと、自分が重大な過ちをおかしたことの実感はどんどん大きくなっているようだった。
不倫相手と対面! その印象は意外にも…
その後、私はある行動に打って出た。
夫に子どもを預け、不倫相手に連絡をとって会いにいったのだ。
お世辞にも美人とはいえない地味な女性だった。そして、既婚者だった。かつ、直属の男性上司とも関係していた。夫は「彼女に愛はない」と言っていたが、彼女もまた不足した愛をどこかで埋め合わせているように見えた。
個室の居酒屋で初対面の彼女に酒をおごり、淡々と話していると、彼女がどうしても幸せに見えなかった。もし、彼女がものすごい美人で、幸せそうで、夫を愛していたなら許せていたのだろうか……。
今でもわからない。
彼女と別れた後、出産後初めて深夜まで家を離れた。心から信頼できる女友達と繁華街で飲んでいると、若い男性2人組に道で「一緒に飲まない?」と声をかけられた。いつもなら断っているはずが、その日は一緒に飲んでみることにした。
「本当にきれいですね」。こんな下心のあるしらじらしい言葉でさえ、ヒビだらけの心に染みいる。
非日常とはこういうものか、と夫が感じていた日常から離れる高揚感を想像した。彼らとは連絡先も交換せずに、逃げるようにタクシーに乗って帰ったが、粉々になった自己肯定感の小さなかけらを2粒くらい拾い集めたような気持ちになった。