「築くのは一生、壊すのは一瞬」。これは、結婚生活における信頼のことだ。先日「注意1秒、ケガ一生」という交通安全の標語を見て筆者が思いついた言葉だ。

今、世の中が不倫ニュースで騒がしい。「育児中の妻と家庭を傷つけた男女は地に落ちろ」といった物騒な言葉や、「他人のことを断罪するのは日本人の悪い癖だ」という謎の日本人論まで様々な意見が飛び交い、非常に興味深い。

世に出回っている記事には「不倫夫と別れる方法」や「不倫男女の不幸な結末」など、憎悪をエスカレートさせる記事には事欠かないが、意外と「相手の不貞を乗り越えた」という実例が少ない。

というわけで、今回の記事の趣旨は、筆者が体験した配偶者の不倫と、その局面をどうやって乗り越えたかを淡々とつづっていきたいと思う。

結論から言うと、現在、夫とはとても円満だ。不倫経験をした人、された人にとっては参考になる部分もあるかもしれない。

不倫発覚時のことを簡単に…

2010年代初め、周囲から「誠実」と言われた夫の不倫が発覚した。いわゆる、社内不倫だ。

当時、私は3歳と2歳の男児の世話に追われていた。

夫の仕事は激務で、残業後の飲み会が多い職場。午前0時をまわっての帰宅が定期的にあり、不審に思って彼が過去に使っていた携帯を開いて不倫が発覚した。2年にわたって、2カ月に1度程度、相手と会っている形跡があった。

中でも「今日は新しい下着だよ☆」というメールを見たときは、怒りで震えた。

そのとき最初に感じたのは、嫉妬の感情とはかけ離れたものだ。

こちらは毎日のように髪を振り乱し、子の食べこぼしにまみれ、トイレトレーニングで失敗した排泄物を処理し、大切なお金を節約し、夫の親戚づきあいもがんばって……という変身前のシンデレラのような生活が延々と続いている。

それなのに、家庭を一緒に運営するもう一方が放蕩にふけり、「恋愛のいいとこどり」をしていることに、殺意にも近い怒りを覚えた。

と同時に、育児をしている自分が全否定されているような気持ちになり、自己肯定感はバラバラに散っていった。

ところがその後、思わぬ展開となる。