実験では、まず参加者を2グループに分け、一方のグループには65という数字を見せ、もう一方には10という数字を見せます。

そのあとに「国連加盟国のうち、全体の何%がアフリカの国々で占められているでしょうか?」という質問をしてみると、「65」の数字を見たグループの平均回答は45%で、「10」の数字を見たグループの平均回答は25%でした。

つまり参加者は、質問される前に全く関係のない数字を見せられたことで、質問に対して予想した数字が大きく誘導されていたのです。

アンカリング効果に騙されないためには?

ここまで、私たちの選択を誘導するアンカリング効果について見てきました。そのうえで、最初の定食セットの例に戻り、もう一度考えてみましょう。

定食の内容が梅・竹・松の順に、焼きそば・焼きサバ・刺身盛り合わせだったとしたら(定食の値段は最初と同じく300円、500円、800円とします)、松を選ぶ方が一般的にお得になります。

なぜならば、もしお得かどうかで考えるならば「原価率の高いものを選ぶ」、つまり「値段の元を取る(材料の値段が高いものを買う)」ほうが、お得な選択ということができるからです。

賃貸契約においても、事前に賃料を正確には把握できなくても「一人暮らしの家賃相場」や「立地別の家賃相場」などを調べ、おおまかな相場観をつかむことで、あらかじめ自分がターゲットとする家賃の価格帯のイメージを持つことができます。

また、携帯のプランにおいても、今までの自分の1カ月分のデータ通信量や、格安SIMのプランなども事前に把握しておくことで、プランを提示されたときに自分に合っているプランかどうか判断できますね。

このように少し気を付けることで、明日からもっと賢く、自分に合った買い物ができるようになるのです。

アンカリング効果に騙されないために、表示された値段だけでなく、常に自分の軸になる価格のイメージを持つように意識してみましょう!

【参考】
Judgment under Uncertainty: Heuristics and Biases」(Science, New Series, Vol. 185, No. 4157. (Sep. 27, 1974), pp. 1124-1131. Amos Tversky; Daniel Kahneman)

鈴木 拓人