厚生労働省の「令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金受給権者の平均受給額は月14万6429円でした。

多少の蓄えがあれば老後もなんとか生活できそうだと思う人もいるかも知れませんが、実際の年金受給額は人によって大きく異なります。

本記事では、老齢厚生年金受給権者の平均受給額と分布について解説します。

人によって受給額が大きく異なる理由も解説しますので、老後の収入を見積もるときの参考にしてください。

1. 厚生年金保険の受給額(平均と分布)

前述の厚生労働省資料より、厚生年金加入者の受給額について見ていきましょう。

1.1 厚生年金加入者の平均受給額

厚生年金加入者は65歳以降、老齢基礎年金と老齢厚生年金を受給します。2023年(令和5年)の平均受給額(受給権者)は月14万6429円で、国民年金受給権者の月5万7584円の2.5倍以上です。

ただし、男女別に見ると平均受給額は大きく異なります。

  • 男性の平均受給額:16万6606円
  • 女性の平均受給額:10万7200円

1.2 厚生年金加入者の受給額の分布

受給状況をさらに細かく見ると、年金受給額は人によって大きく異なることがわかります。受給額の分布状況は次の通りです。

老齢厚生年金受給権者の受給額の分布1/3

老齢厚生年金受給権者の受給額の分布

出所:厚生労働省「令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに筆者作成

【男性】

  • 5万円未満:0.6%
  • 5万円以上10万円未満:8.9%
  • 10万円以上15万円未満:23.7%
  • 15万円以上20万円未満:42.8%
  • 20万円以上25万円未満:21.4%
  • 25万円以上:2.6%

【女性】

  • 5万円未満:4.3%
  • 5万円以上10万円未満:40.1%
  • 10万円以上15万円未満:46.2%
  • 15万円以上20万円未満:9.1%
  • 20万円以上25万円未満:1.2%
  • 25万円以上:0.1%


男女計を見ると、受給額10万円以上20万円未満の人が6割強を占めます。しかし、受給額20万円以上の人が全体の15%を占めるのに対し、10万円未満の人も20%以上います。

特に、女性の4割強が10万円未満で、年金だけで老後生活を賄うのは厳しいと感じる人もいるでしょう。

ここまで、老齢厚生年金受給権者の平均受給額と分布状況を紹介しました。次章では、年金額の計算方法と、なぜ人によって受給額が大きく異なるかについて解説します。

2. 年金額の計算方法

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metamorworks/shutterstock.com

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年金額は、「老齢基礎年金額」と「老齢厚生年金額」をそれぞれ算出した上で合算して計算します。

  • 年金額=老齢基礎年金額+老齢厚生年金額

老齢基礎年金額は、基礎年金の満額(2025年度は83万1700円)に保険料を納付した割合(20歳から60歳までの480ヶ月のうち保険料を何ヶ月納付したか)を掛けて計算します。

きちんと保険料を納付していれば、老齢基礎年金額は約83万円受け取れます。

  • 老齢基礎年金額=83万1700円×保険料納付月数/480ヶ月

老齢厚生年金額は、厚生年金加入中の報酬の平均月額(平均標準報酬額)に厚生年金加入月数と所定の係数をかけて計算します。2003年4月以降に厚生年金に加入した人の年金額(加算は除く)は次の通りです。

  • 老齢厚生年金額=平均標準報酬額×5.481/1000×厚生年金加入月数

3. 人によって受給額が異なる理由

保険料をきちんと納付して老齢基礎年金を満額もらえる人でも、人によって受給額は大きく異なります。理由は老齢厚生年金額が異なるからです。

老齢厚生年金額の計算式の通り、年金額は平均標準報酬額と厚生年金加入月数に比例します。

例えば、老齢基礎年金額と平均標準報酬額が同じ人でも、厚生年金に40年加入した人は20年加入した人の2倍もらえます。また、平均標準報酬額が2倍になれば老齢厚生年金額も2倍です。

20歳から60歳まで年金制度に加入して老齢基礎年金を満額貰える人の受給額を、厚生年金の加入月数と平均標準報酬額ごとに計算しました。

ケース別の受給額3/3

ケース別の受給額

出所:筆者計算・作成

3.1 平均標準報酬額20万円のケース

  • 厚生年金10年・国民年金30年:96万円
  • 厚生年金20年・国民年金20年:109万円
  • 厚生年金30年・国民年金10年:123万円
  • 厚生年金40年・国民年金0年:136万円

3.2 平均標準報酬額30万円のケース

  • 厚生年金10年・国民年金30年:103万円
  • 厚生年金20年・国民年金20年:123万円
  • 厚生年金30年・国民年金10年:142万円
  • 厚生年金40年・国民年金0年:162万円

3.3 平均標準報酬額40万円のケース

  • 厚生年金10年・国民年金30年:109万円
  • 厚生年金20年・国民年金20年:136万円
  • 厚生年金30年・国民年金10年:162万円
  • 厚生年金40年・国民年金0年:188万円

3.4 平均標準報酬額50万円のケース

  • 厚生年金10年・国民年金30年:116万円
  • 厚生年金20年・国民年金20年:149万円
  • 厚生年金30年・国民年金10年:182万円
  • 厚生年金40年・国民年金0年:215万円

報酬額を自分で決めるのは難しいですが、長期間厚生年金に加入することで受給額を増やすことができます。

4. まとめにかえて

厚生年金受給権者の平均受給額は月14万6429円ですが、受給額20万円以上の人が全体の15%を占める一方、10万円未満の人は20%以上もいます。

受給額の個人差が大きい理由は、人によって厚生年金加入中の報酬額と加入期間が大きく異なるからです。

個人の努力で報酬額を思い通りにアップするのは難しいため、年金額を増やしたいなら、定年後も仕事を続けて厚生年金加入期間を増やすことを検討してみましょう。

参考資料

西岡 秀泰