一緒に遊んだ子が、その日の晩亡くなりました。原因は虐待によるケガ。現在社会的問題になっている虐待ですが、20年以上前に私の身近に起こっていた事件でもあります。当時は大きく報道されることもなく、まるで忘れ去られたかのよう。

でも今も心の片隅にあり、不意に記憶が蘇ります。虐待が与える影響は当人だけでなく、もっと多くの子供に広がっているのです。

とても優しかった男の子が、虐待で死んだ

小学生だった頃の話です。私には5歳離れた弟がいるのですが、ある日弟の友だちAくんが家に遊びに来ました。母は仕事をしていたため、母が帰宅するまで弟たちの面倒をみることに。と言っても、もう小学生の男の子。そこまで世話をしなくても、自分たちでゲームをして遊んでいました。

1時間ほど遊んだ頃でしょうか。Aくんの母親から電話がありました。「今から迎えに行きます」と。「母がもうすぐ帰宅するので、帰ってきたら送っていくと言っていました」と伝えたのですが、「今すぐ迎えに行きます」と5分後くらいに到着。「もうすぐ母が帰ってくるので、良ければ待ちませんか」とすすめたのですが、とても急いでいる様子。Aくんを連れて、そそくさと帰ってしまいました。

Aくんは来たときも帰るときも、あいさつのできるしっかりとした子でした。弟と遊んでいる間も、揉めることなく、優しい男の子という印象。弟とも「小学校でいい友だちできてよかったね」と話したくらいです。そんなほのぼのとした気持ちが、一夜にして消えてしまうとは、このとき思ってもいませんでした。