3. 【役職を離れたあと】最も多いのは「同格のスタッフ職」。専門職・エキスパートとして働く道
では、役職を離れたあとはどのような仕事に就くのでしょうか。人事院の調査によると、役職定年後の配置先は、部長級・課長級ともに「同格のスタッフ職」とする企業が最も多く、部長級で43.1%、課長級で42.9%でした。次いで「格下のスタッフ職」が部長級で32.9%、課長級で33.9%です。
「格下のライン職」は部長級で9.5%、課長級で8.8%、「出向・転籍」は部長級で0.5%、課長級で0.1%でした。「その他」は部長級で13.8%、課長級で14.2%です。
人事院の用語の解説では、「スタッフ職」は、「専門的な知識や経験を活かして特定の職務を専ら担当する」、または部長・課長・係長といったライン職に対して、側面から援助や助言を行う職種とされています。「専門職」「専任職」「エキスパート」といった呼び名がその代表です。
つまり、役職定年のあとに多いのは、部下を率いるライン職から離れ、これまでの知識や経験を専門性として活かす働き方です。管理職として積み重ねてきた経験は、役職を離れたあとも、助言や専門的な仕事のなかで生かされる場面が多いと考えられます。
4. 【定年が61歳以上の企業】役職定年は60歳とする企業が多数
定年の年齢が61歳以上の企業に絞ると、役職定年制がある企業の割合は28.1%でした。500人以上の企業では43.2%、100人以上500人未満の企業では24.9%です。制度がある企業のうち95.8%は、役職定年制を「今後も継続」するとしています。
この企業で役職定年の年齢を見ると、部長級・課長級ともに「60歳」とする企業が最も多く、部長級で70.5%、課長級で67.3%でした。役職を離れたあとの配置は、部長級では「同格のスタッフ職」が38.8%で最も多く、次いで「格下のスタッフ職」が36.0%です。課長級では「格下のスタッフ職」が39.6%で最も多く、「同格のスタッフ職」が37.3%と続きます。
定年が61歳以上の企業では、60歳で役職を離れ、そのあともスタッフ職として同じ会社で働く形をとる企業が多いことがうかがえます。管理職としての期間のあとに、専門性を活かして働く期間が続く、という働き方の流れが見えてきます。
5. 【役職定年の前に】自分の会社の制度と、これからの働き方を確かめる
まず、自分の会社に役職定年制があるのか、あるとしたら部長級・課長級それぞれ何歳なのかを確かめておきましょう。役職定年は会社ごとに決まりが異なる人事制度なので、就業規則や人事制度の案内を見たうえで、くわしいところは勤め先の人事部門に確かめるのが確実です。
次に、役職を離れたあとにどのような配置があり得るのかも、あわせて確かめておきたいところです。人事院の調査では、同格・格下のスタッフ職が合わせて7割台を占めていました。スタッフ職として働く場合、これまでの経験のうち、どの分野の知識や技能を専門性として活かせるかが大切になります。
そのうえで、これまでの仕事を振り返り、自分が得意としてきた分野や、ほかの人に助言できる経験を書き出してみるとよいでしょう。部下の育成や、社内の調整で培ってきたことも、スタッフ職として働くうえでの強みになり得ます。
役職を離れる年齢と、その先の定年の年齢とを並べてみると、管理職として働く期間と、専門性を活かして働く期間の長さが見えてきます。これからのキャリアをどう組み立てるかを考えるときに、役職定年をひとつの区切りとして意識しておくと、今後のキャリアの準備を始める時期もつかみやすくなります。いまの年齢から役職定年の年齢まであと何年あるのかを数えておくと、その間に身につけたい知識や、引き継いでおきたい仕事も整理しやすくなるでしょう。役職を離れたあとにどのような役割で働きたいのかを、これからの働き方の希望として上司や人事部門との面談で伝えておくことも、ひとつの方法です。
6. まとめにかえて
人事院の令和7年の調査によると、従業員100人以上の企業のうち役職定年制がある企業は22.3%で、500人以上の企業では30.4%でした。役職定年の年齢は、部長級は60歳、課長級は55歳とする企業が最も多く、企業によってばらつきがあります。
ラインを外れたあとの配置は、部長級・課長級ともに「同格のスタッフ職」が最も多く、専門職やエキスパートとして経験を活かす働き方が中心です。自分の会社の制度を知り、これまでの経験のどこを専門性として活かせるかを考えておくことが、役職定年を迎える前の準備になりそうです。役職定年は、管理職としての働き方に区切りをつけるだけでなく、その先の働き方を選び直す節目として捉えることもできます。これから役職定年を迎える方は、ラインの仕事を離れたあとに担いたい役割を、早めに思い描いておくとよいでしょう。
7. 編集部よりコメント
制度を設けている企業は全体の2割ほどで、制度のない企業のほうが多数です。役職を離れる年齢も、55歳から60歳を中心に会社ごとに分かれています。周りの話や一般的なイメージだけで判断せず、自分の会社の決まりを確かめておくことが大切です。
ラインの管理職として働く時期と、専門性を活かして働く時期の両方を見通しておくと、どちらの時期にも自分らしい役割を見つけやすくなるのではないでしょうか。役職の有無にかかわらず、自分の経験をどう周りに役立てていくかを考える機会として、役職定年の仕組みを知っておきたいところです。
参考資料
宮野 茉莉子
