4. 会社の健康保険から国民健康保険に移ると、高額療養費の多数回該当は数え直しになる
高額療養費には、上限を超える月が続いたときに4回目から上限が下がる「多数回該当」があります。退職をはさんで治療が続く人は、健康保険が変わったときの回数の数え方も確かめておきます。
4.1 多数回該当は、診療月を含む12か月以内に3回以上上限を超えたときの4回目から
練馬区の案内では、多数回該当は診療月を含む12か月以内に限度額を超える月が3回以上あり、その月が4回目以降になる場合をさします。70歳未満の区分ウとエでは、4回目からの上限が4万4400円になります。
4.2 加入する保険者が変わると、多数回該当のカウントはリセットされる
厚生労働省の「高額療養費制度に関する参考資料」には、高額療養費制度の在り方に関する専門委員会の議論のまとめが載っています。そこでは、現行の制度について次のように書かれています。
現行では、加入する保険者が変わる際に、多数回該当のカウントがリセットされる仕組みとなっているところ、実務的な課題もあるものの、カウントが引き継がれる仕組みの実現に向けた検討を進めていくべきである。
出所:厚生労働省「高額療養費制度に関する参考資料」
たとえば在職中の6月から9月に4か月続けて上限を超えていても、10月に国民健康保険に移れば、国民健康保険では10月が1回目として数えられます。区分エの人なら、10月の上限は4万4400円ではなく6万1500円です。
4.3 月をまたいで治療が続くなら、加入の時期と区分を先に確かめる
多数回該当の回数が数え直しになるのは、治療を受ける人の側では変えられない部分です。そのぶん、国民健康保険でどの区分になるかを早めに確かめておくと、月ごとの支払いの見通しを立てやすくなります。
年間上限も、8月から翌年7月までの自己負担を合計して判定します。退職をはさむ年は、会社の健康保険と国民健康保険のどちらで支払った分なのかが分かるように、医療機関と薬局の領収書を加入先ごとに分けておくと整理しやすくなります。
5. 国民健康保険の窓口で、高額療養費について届け出ておきたい3つのこと
離職した人の特例も、国民健康保険の高額療養費の支給も、市区町村の窓口への届出や申請が前提です。新宿区や川崎市の案内から、手続きで押さえておきたい点を確認します。
5.1 非自発的失業者の特例は、雇用保険受給資格者証を持って届け出る
新宿区は、前年の給与所得を100分の30として国民健康保険料の算定と高額療養費の所得区分判定を行うとしており、軽減には届出が必要です。窓口では雇用保険受給資格者証または雇用保険受給資格通知と本人確認書類などを示し、郵送でも届け出られます。
対象かどうかは離職理由のコードで判断され、新宿区では特定受給資格者が11・12・21・22・31・32、特定理由離職者が23・33・34です。新宿区の案内では、離職日時点で65歳未満であることも条件になっています。
5.2 保険料の軽減と高額療養費の特例は、期間の数え方が違う
川崎市の案内では、国民健康保険料の軽減は離職日の翌日の属する月から、その月の属する年度の翌年度末までです。高額療養費の自己負担限度額の判定は、離職日の翌日の属する月の翌月診療分から、翌々年度の7月末までとしています。
同じ届出で両方に使われますが、終わる時期は高額療養費のほうが4か月長くなります。保険料の軽減が終わったあとの診療分も、7月末までは特例の区分で判定されます。
5.3 高額療養費の申請は、診療月の翌月1日から2年以内
練馬区は、高額療養費の申請期間を、診療を受けた月の翌月1日から起算して2年間としています。特例の届出が遅れて区分があとから下がった場合も、この期間内なら差額を申請できるかを窓口で確かめておくと安心です。
6. まとめ
国民健康保険の高額療養費は、加入者全員の前年の旧ただし書き所得で所得区分が決まります。倒産・解雇などで離職した特定受給資格者と特定理由離職者は、給与所得を100分の30にして判定する特例があり、計算例では医療費100万円の月の上限が9万2940円から6万1500円になりました。
一方で、加入する保険者が変わると多数回該当のカウントはリセットされます。離職したら、雇用保険受給資格者証を持って国民健康保険の窓口で特例を届け出て、自分の所得区分を書面で確かめ、家族とも共有しておきましょう。