3. 海外療養費の申請には「診療内容明細書」「領収明細書」とその日本語訳が必要になる
海外療養費の申請では、申請書のほかに、現地の医療機関に記入してもらう書類や、渡航の事実を確認するための書類をそろえる必要があります。
3.1 海外療養費の申請で必ずそろえる書類は申請書を含めて7種類ある
協会けんぽの「海外療養費 支給申請書 記入の手引き」から、必要な書類を確認しましょう。
すべての申請で必要になる書類は次のとおりです。
- 海外療養費支給申請書
- 様式A・診療内容明細書(医科の場合)、または様式C・歯科診療内容明細書(歯科の場合)
- 様式B・領収明細書
- 領収書の原本とその日本語訳
- 様式AまたはCと、様式Bの日本語訳
- 受診者の海外渡航期間が確認できる書類
- 同意書
このほか、ケガによる申請では「負傷原因届」、第三者による傷病では「第三者行為による傷病届」、被保険者が亡くなって相続人が請求する場合は続柄がわかる「戸籍謄本」等が必要です。海外での臓器移植による申請にも、別に定められた書類があります。
3.2 様式A〜Cは現地の担当医に記入と署名を依頼する
診療内容明細書と領収明細書は、被保険者や受診者が記入することはできません。現地の医療機関の担当医に記入・署名を依頼します。
様式は、1か月ごと、受診者ごと、医療機関ごと、入院・外来ごとに1枚ずつ、それぞれの医療機関で証明してもらう必要があります。
協会けんぽは、様式Aの傷病名や疾病分類番号、様式Bの通貨単位は必ず記載してもらうよう求めています。
様式Aと様式Bは、協会けんぽのホームページに英語・韓国語・中国語・タイ語・ベトナム語・スペイン語・ポルトガル語の版があります。様式Cは英語・韓国語・中国語・スペイン語・ポルトガル語の版です。
3.3 翻訳文には翻訳者の署名と住所・電話番号が必要になる
外国語で書かれた書類には、日本語訳を添付します。翻訳文には、翻訳者が署名し、住所と電話番号を明記します。
同じ項目・内容が記載されていれば、医療機関が独自に作成した様式を使っても構いませんが、その場合も日本語訳は必ず添付が必要です。
3.4 パスポートのコピーと同意書は申請のたびに提出する
受診した期間に実際に海外へ渡航していたことを確認するため、次のいずれかを添付します。
- パスポートのコピー(氏名・顔写真のページと、その期間の出入国スタンプのページ)
- 査証(ビザ)のコピー(氏名と有効期限が記載されたもの)
- 航空チケットのコピー(eチケットの控えを含む)
同意書は、協会けんぽが受診した医療機関に具体的な診療内容を照会する場合があるため、療養を受けた方の同意を得る書類です。
渡航期間が確認できる書類と同意書は、申請の都度提出が必要です。協会けんぽは「添付もれが多い」と注意を呼びかけています。
4. 海外療養費は支払った翌日から2年以内に申請し、審査には通常数か月かかる
海外療養費は、帰国してすぐに受け取れるものではありません。申請期限から受け取りまでの流れを確認しておきましょう。
4.1 海外療養費の申請期限は治療費を支払った翌日から2年になる
海外で治療費を支払った翌日から2年を経過すると、時効により申請できなくなります。
現地の担当医に書類を書いてもらう手間や、翻訳の準備にかかる時間を考えると、帰国後は早めに取りかかる必要があります。
4.2 提出先は協会けんぽ神奈川支部で、電子申請もできる
海外療養費の審査は、協会けんぽ神奈川支部が一括して行っています。紙の申請書は神奈川支部へ郵送し、ほかの支部に提出した場合も神奈川支部に回送されます。
協会けんぽの電子申請サービスでも、海外療養費支給申請書を提出できます。電子申請ではマイナンバーカードを使って資格情報を取得し、添付書類は画像データでアップロードします。
なお、家族(被扶養者)が受診した場合でも、申請書は被保険者本人が記入します。
4.3 海外療養費は日本国内の口座で受け取り、海外への直接送金はできない
協会けんぽは、海外療養費の審査には通常数か月かかるとしています。被保険者や医療機関等に照会することもあり、時間がかかる場合があります。
支給は日本にある口座への振込で、海外への直接送金はできません。協会けんぽは、事業主や日本在住の家族などに受け取りを委任するよう案内しており、その場合は申請書の受取代理人の欄に記入します。
日本国内に住所がない場合は、勤務先や親族宅など、郵便物を受け取れる日本国内の住所を申請書に記入します。
5. まとめ
協会けんぽの海外療養費は、海外で急な病気やケガにより現地で受診した場合に、医療費の一部が払い戻される制度です。2024年度の支給は5833件で、支給件数は2020年度から毎年増えています。
支給額は日本国内で治療した場合の費用が基準になり、外貨は支給決定日のレートで円に換算されます。美容整形などの保険適用外の治療や、治療を目的とした渡航は対象外です。
申請期限は治療費を支払った翌日から2年です。海外で受診したら領収書を必ず受け取り、現地の医療機関に様式の記入を依頼するなど、帰国後の申請に向けて早めに準備を進めましょう。
参考資料
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)『海外療養費』
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)『海外療養費支給申請書』
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)『海外療養費 支給申請書 記入の手引き』
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)『療養の給付』
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)『電子申請 対象申請』
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)『事業年報(令和6年度)』
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)『事業年報』(令和2年度〜令和5年度)
- 厚生労働省『海外療養費の支給申請及び審査等に係る事務の取扱いについて(平成28年3月31日保国発0331第4号)』
和田 直子