働き盛りの配偶者が在職中に亡くなられた場合、厚生年金の加入期間がまだ短いことも少なくありません。そのときに遺族厚生年金がいくらになるのかは、気になるところです。
日本年金機構は、在職中の死亡など短期要件にあたる場合、厚生年金保険の被保険者期間が300月(25年)未満なら300月とみなして遺族厚生年金を計算すると説明しています。
この記事では、加入10年で在職中に亡くなった夫のモデルケースで、子が1人いる妻が受け取る遺族年金の年額を計算します。
1. 【モデルケース】加入10年・平均標準報酬額40万円なら遺族厚生年金は年49万3290円
まず、遺族厚生年金の額を計算します。
前提は、夫の平均標準報酬額が40万円、厚生年金の加入期間が120月(10年)で、全期間が平成15年4月以後という設定です。
1.1 加入120月でも300月とみなして報酬比例部分を出す
在職中の死亡は短期要件にあたるため、被保険者期間の120月は300月とみなされます。
報酬比例部分は、40万円×5.481/1000×300月で年65万7720円です。実際の120月で計算した場合の2.5倍にあたります。
1.2 その4分の3にあたる年49万3290円が遺族厚生年金になる
遺族厚生年金の額は報酬比例部分の4分の3で、このモデルケースでは年49万3290円です。月あたりにすると約4万1108円になります。
2. 遺族厚生年金は4つの要件と、5つの立場の遺族の順位で決まる
次に、300月とみなす計算がどの場面で使われるのか、だれが受け取るのかを確認します。
遺族厚生年金の受給要件は4つあり、そのうち3つが短期要件です。
2.1 300月とみなすのは短期要件の3つだけ
短期要件は、厚生年金保険の被保険者である間に亡くなったとき、被保険者期間に初診日がある病気やけがで初診日から5年以内に亡くなったとき、1級・2級の障害厚生(共済)年金を受け取っている方が亡くなったときの3つです。
老齢厚生年金の受給資格を満たした方が亡くなったときは長期要件にあたり、300月とみなす計算は使われません。
2.2 受け取れるのは最も順位の高い遺族
受け取れるのは、亡くなった方に生計を維持されていた配偶者・子・父母・孫・祖父母の5つの立場の遺族のうち、最も優先順位の高い方です。順位は子のある配偶者、子、子のない配偶者、父母、孫、祖父母の順です。
子のない夫、父母、祖父母は、亡くなった当時55歳以上である方に限られ、受給開始は60歳からです。子のある夫は、遺族基礎年金を受給中の場合に限って、60歳より前でも遺族厚生年金をあわせて受け取れます。
3. 子が1人いる65歳未満の妻は、遺族基礎年金と合わせて年158万4390円
65歳未満の妻に子がいる場合は、遺族厚生年金に遺族基礎年金が加わります。
子は、18歳になった年度の3月31日までの子、または20歳未満で障害等級1級・2級の状態にある子です。
3.1 遺族基礎年金は子1人で年109万1100円
令和8年4月分からの遺族基礎年金は、昭和31年4月2日以後生まれの方で年84万7300円、昭和31年4月1日以前生まれの方で年84万4900円です。1人目の子の加算額は24万3800円です。
昭和31年4月2日以後生まれの妻なら、遺族基礎年金は年109万1100円です。遺族厚生年金の年49万3290円と合わせて、年158万4390円になります。
子が1人いる妻が受け取る遺族年金の内訳(夫の平均標準報酬額40万円・加入120月・在職中の死亡の試算・令和8年度の額)1/2
出所:LIMO編集部作成
- 遺族厚生年金:年49万3290円
- 遺族基礎年金(基本額):年84万7300円
- 子の加算額(1人目):年24万3800円
- 合計:年158万4390円
3.2 子がいない妻は40歳以上なら中高齢寡婦加算が付く
子がいない妻には遺族基礎年金は出ません。夫が亡くなったときに40歳以上65歳未満であれば、65歳になるまで中高齢寡婦加算の年63万5500円が遺族厚生年金に加算されます。
4. 65歳以上の遺族が遺族厚生年金を受け取るときは、自分の老齢厚生年金との差額になる
遺族が65歳以上の場合は、本人の老齢厚生年金との調整があります。
遺族厚生年金をそのまま上乗せで受け取れるわけではない点に注意が必要です。
4.1 老齢厚生年金が全額支給される
65歳以上で老齢厚生年金を受け取る権利がある方は、老齢厚生年金が全額支給されます。
4.2 遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額が止まる
遺族厚生年金は、老齢厚生年金に相当する額が支給停止になります。実際に遺族厚生年金として振り込まれるのは、自分の老齢厚生年金を上回る部分です。
加入期間が短くても、在職中の死亡なら300月とみなして計算されます。ねんきん定期便で亡くなった方の加入月数を確かめておくと、遺族年金の見込みを立てる手がかりになります。
