5. 交通事故など第三者の行為で亡くなったときは、遺族年金と損害賠償が調整される

ここからは、死亡の原因が交通事故など第三者の行為による場合を見ていきます。

この場合は、遺族年金の請求で出す書類が増えるほか、加害者から受け取る損害賠償との間で調整が行われます。

5.1 請求書に第三者行為事故状況届などを添える

日本年金機構は、遺族厚生年金の請求で、死亡の原因が第三者行為の場合に必要な書類として次のものを挙げています。

  • 第三者行為事故状況届(所定の様式あり)
  • 交通事故証明または事故が確認できる書類(事故証明がとれない場合は、事故内容がわかる新聞のコピーなど)
  • 確認書(所定の様式あり)
  • 被害者に被扶養者がいる場合、扶養していたことがわかる書類
  • 損害賠償金の算定書(すでに決定済の場合。示談書等受領額がわかるもの)

5.2 損害賠償の生活補償費相当額の範囲で、遺族年金を一定期間支給しない

厚生労働省の通知「厚生年金保険法及び国民年金法に基づく給付と損害賠償額との調整の取扱いについて」は、遺族が損害賠償を受けた場合、年金と損害賠償による二重保障を避けるため、その価額の限度で給付を行わないことができるとしています。

対象になるのは遺族厚生年金、遺族基礎年金、寡婦年金です。死亡一時金は保険料の掛け捨て防止の考え方に立った給付であるとして、損害賠償額との調整は行わないとしています。

5.3 支給しない期間は最長36月で、平成27年10月1日以降の事故に適用

支給しない期間(月数)は、損害賠償額のうち生活補償費相当額を、家計調査の消費支出額をもとにした基準生活費で割るなどして算出します。算出した月数が36月以上となったときは36月です。

この取扱いは、平成27年10月1日以降に発生した第三者行為事故から適用されています。モデルケースで仮に上限の36月となった場合、年158万4390円の3年分にあたる475万3170円が支給されない計算です。

損害賠償との調整で遺族年金を支給しない月数の決まり方2/2

損害賠償金の総額から慰謝料や葬祭料などを差し引いて生活補償費相当額を出し、基準生活費で割って支給しない月数を決め、上限は36月であることを示した図

出所:厚生労働省『厚生年金保険法及び国民年金法に基づく給付と損害賠償額との調整の取扱いについて〔厚生年金保険法〕』を参考にLIMO編集部作成

5.4 慰謝料や葬祭料、医療費は差し引いて計算する

生活補償費相当額は、損害賠償金の総額をそのまま使うわけではありません。生活補償部分(逸失利益)が明確でない場合は、次の2つのうち低い方の額になります。

  • 損害賠償金の総額から、慰謝料と、葬祭料・医療費・緊急経費・雑損失の実支出額を差し引いた額
  • 損害賠償金の総額から、葬祭料・医療費・緊急経費・雑損失の実支出額を差し引いた額の3分の2

なお、年金の給付は損害賠償を受けるのを待たずに行うとされています。給付が始まったあとに損害賠償を受けた場合は、それまでに支給した分を年金の内払い等で返還する形になります。

6. まとめ

加入10年・平均標準報酬額40万円で在職中に亡くなった夫のモデルケースでは、300月とみなす計算により遺族厚生年金は年49万3290円でした。子が1人いる妻は、遺族基礎年金の年109万1100円と合わせて年158万4390円を受け取ります。

死亡の原因が交通事故など第三者の行為による場合は、請求書に第三者行為事故状況届などを添えます。損害賠償を受けると、生活補償費相当額の範囲で遺族年金が最長36月支給されず、死亡一時金は調整の対象外です。

示談の内容によって調整の月数が変わるため、損害賠償の話し合いが進んだ段階で、示談書などを持って年金事務所に相談しておくとよいでしょう。

参考資料

村岸 理美