配偶者を亡くして遺族厚生年金を請求したのに、いつまでも額が決まらない。65歳以上の方からは、そうした声が聞かれることがあります。
日本年金機構が2026年6月22日に更新した「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」の留意事項には、その理由にあたる記載があります。遺族厚生年金の受給権者が老齢厚生年金などを受ける権利を持っているときは、その年金の裁定の請求が必要だというものです。
この記事では、なぜ自分の老齢厚生年金を先に請求する必要があるのかを確かめ、令和8年度の額を使って手元に残る金額まで見ていきます。
1. 遺族厚生年金の額を決めるには、ほかの年金の裁定の請求が要る
まず、留意事項に書かれている内容を確認します。
これは書類の順番の話ではなく、額の計算そのものに関わる取り扱いです。
1.1 対象になるのは老齢厚生年金・退職共済年金・遺族共済年金
日本年金機構は、遺族厚生年金の受給権者が老齢厚生年金、退職共済年金または遺族共済年金を受ける権利を有するときは、遺族厚生年金の支給額の決定のためにこれらの年金の裁定の請求が必要だとしています。
会社員として働いた期間がある方や、公務員として共済組合に加入していた期間がある方が当てはまります。
1.2 自分の年金額が決まらないと遺族の分も決まらない
65歳以上の遺族厚生年金は、自分の老齢厚生年金の額を使って計算します。そのため自分の年金額が確定していないと、遺族厚生年金として支給される額も確定しません。
遺族厚生年金だけを請求して待っていると、この段階で手続きが止まってしまいます。
2. 65歳以上では老齢厚生年金が全額支給される
次に、65歳以上の調整のしくみを確認します。
両方の年金をそのまま受け取れるわけではありません。
2.1 平成19年4月1日から取り扱いが変わった
平成19年3月31日までは、原則としてどちらを受けるかを選択することになっていました。平成16年の年金制度改正により、平成19年4月1日からは自分自身が納めた保険料を年金額に反映させるしくみに変わりました。
65歳以上で遺族厚生年金と老齢厚生年金を受ける権利がある方は、老齢厚生年金が全額支給となり、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額の支給が停止されます。
2.2 遺族厚生年金の額そのものも2通りを比べて決まる
65歳以上で老齢厚生年金や退職共済年金を受け取る権利がある方が配偶者の死亡による遺族厚生年金を受け取るときは、2つの額を比べて高いほうが遺族厚生年金の額になります。
1つは亡くなった方の報酬比例部分の4分の3の額、もう1つは亡くなった方の報酬比例部分の2分の1の額と自身の老齢厚生年金の2分の1の額を合算した額です。どちらの式にも自分の老齢厚生年金の額が関わるため、裁定の請求が先に必要になります。
3. モデルケースで手元に残る額はいくらになるか
ここからは、実際の数字を当てはめてみます。
亡くなった配偶者の平均標準報酬額が35万円で480月加入、自分の老齢厚生年金が月5万円という前提で試算します。
3.1 2つの式を計算して高いほうを取る
亡くなった方の報酬比例部分は年92万808円、月額では7万6734円です。その4分の3にあたる月5万7550円が1つ目の額になります。
2つ目は、月7万6734円の2分の1である月3万8367円と、自分の老齢厚生年金月5万円の2分の1である月2万5000円を足した月6万3367円です。高いほうは2つ目なので、遺族厚生年金の額は月6万3367円となります。
3.2 支給停止のあとに残る額
老齢厚生年金の月5万円は全額支給されます。遺族厚生年金の月6万3367円からは、老齢厚生年金に相当する月5万円の支給が停止されます。
実際に遺族厚生年金として振り込まれるのは月1万3367円で、老齢厚生年金と合わせた合計は月6万3367円です。ここに自分の老齢基礎年金が加わります。
窓口では、遺族の分だけを出して帰ってしまう方がいます。自分の年金の請求書もそろっているか、その場で職員に確かめてもらうと二度手間になりません。
