人生100年時代、年金だけでは老後が不安……という声も聞こえてきます。しかし、老後に備えた「貯金」ももちろん大事ですが、さらに大事なのは「貯筋」だ、と言うのは、5万部を突破した『世界一効率がいい 最高の運動』著者であり、医師・科学者でもある川田浩志さんです。

健康で長生きするカギは“筋肉”にあるという川田さんが勧める、もっとも効率のいい最新トレーニングとは?

健康寿命を伸ばすカギは「大きな筋肉」が握っている

「ゆっくり歩く人ほど死亡リスクが高い」という言葉を聞いたことがありますか?

暴論のように聞こえるかもしれませんが、実はこれには医学的なデータの裏付けが存在します。東京都老人総合研究所(現・東京都健康長寿医療センター)が2014年、65歳以上の男女1800人を対象に行った調査でも同様の結果が得られています。たとえば、高齢者の歩く速度から、その高齢者があと何年生きられるか、ある程度予測することさえできるのです。

100年人生を思う存分謳歌したいなら、健康寿命をいかに伸ばせるかがカギといえます。そして、その健康に直結するのが“筋肉”なのです。

筋肉について、少しお話ししましょう。

人の筋肉は大きく分けて「速筋(そっきん)」と「遅筋(ちきん)」の2種類があります。それぞれ、その色の特徴から「白筋」と「赤筋」とも呼ばれます。

「敏捷性」や「機敏さ」は、いわゆる「速筋(そっきん)」と呼ばれる、瞬発的な力を発揮する筋肉の量が決め手となります。つまり、「速筋の衰え」は、「体の老化」のひとつの目安になるわけです。

持続力に大きく影響する遅筋は、ウォーキングやハイキングなどの運動習慣で比較的、鍛えやすく衰えにくい筋肉です。それに比べて、速筋は意識して鍛えていないと、年齢とともにどんどん落ちていきます。

特に落ちやすいのが大腿四頭筋と腹筋の「大きな筋肉」です。太ももにしてもお腹にしても、体の支えとなる部分ですから、こうした部位の筋肉が落ちてくると自然と動作が緩慢(かんまん)になっていく……これが典型的な「老化現象」といえます。

これが「貯金」よりも「貯筋」という所以です。

いくら老後用の貯金を貯めても、まず健康でなければ人生の楽しみは半減してしまうでしょう。また、長生きしたとしても病気を患ったままであれば、医療費もかさんでしまいます。病気はいちばんの「金食い虫」なのです。

「筋トレ」効果と「ダイエット」効果が一度に得られる夢の運動法

若さを表すこの速筋、ウォーキングや早歩き、階段を登る動作、ゆっくり何十回も行う筋トレといった日常的な動きではなかなか鍛えられません。というのも、速筋を鍛える際に必要なのは、“筋肉への負荷”だから。最大筋力の40%以上という大きな負荷をかける必要があるのです。

そこで効果的なのが、最新のトレーニング「HIIT(ヒット)」です。近年では、スポーツ界や医療界でも取り入れられるなど世界的に広がっているため、ご存知の方もいらっしゃるでしょう。

このトレーニングの独特なところは、高強度の(負荷が高い)運動と休息を短いスパンで交互に行う点。

たとえばダッシュと軽いランニングを交互に組み合わせたり、スポーツジムのエアロバイクを「全力の7~8割の力」で漕ぎ、休憩(またはゆっくり漕ぐ)と組み合わせたり、スクワットやバーピー、ジャンピングジャックといった全身を使うエクササイズに緩急をつけるというトレーニングで、大腿四頭筋や腹筋、背筋などの大きな筋肉に負荷をかける運動が中心です。

特別な道具などは必要なく、自宅でもできますので、まずは、「(20秒運動+10秒休憩)× 8セット」で、運動を始めてみましょう。実質的に運動している時間は、2分40秒。1日に、たったの3分弱、週に2~3回行うだけで大きな効果が得られるのです。

慣れたら「30秒運動+15秒休憩」× 8セット」に増やしたり、週3~4回に増やしてもいいですが、それ以上や、土日に連続して行うといったことは身体に大きな負荷がかかるためお勧めできません。つまり、HIITは、徹底的に短時間で最大限の効果を狙う運動法といえます。

HIITは、たったひとつの運動で「筋トレ」だけでなく「有酸素運動(脂肪燃焼)」の両方の運動効果が得られるのが特徴です。これによって速筋が効率よく鍛えられ、同時に持久力が上がり、機敏な動きも取り戻すことができるのです。

1カ月半・週2回のHIITを実行。脂肪2キロ分が筋肉に入れ替わり、腹筋が割れた30代プログラマー

「脂肪」が「筋肉」に入れ替わるだけじゃない。糖尿病にバツグンの効果を発揮

「ダイエットしなくちゃ!」とおっしゃる方のほとんどが「体重減」を目指しますが、身長と体重のバランスを表すBMIだけで見ると、日本人は「適正」な方も多いのです。健康のためにはむしろ、内臓脂肪などの体脂肪率を気にしていただきたいものです。