厚生労働省の第55回社会保障審議会生活保護基準部会(令和8年2月27日)の資料によると、生活扶助基準に上乗せされている特例加算が、令和8年10月から1人あたり月額2500円になります。

いまは1人あたり月額1500円なので、1000円の引き上げです。

ただし、この1000円がそのまま基準額に反映される世帯と、基準額がまったく動かない世帯に分かれます。

この記事では、特例加算の見直しの中身と、世帯類型・級地ごとの基準額、そして増える世帯と増えない世帯の分かれ目について確認していきます。

1. 生活保護の特例加算が来月10月分から月2500円に

まず、今回決まった内容を確認します。

1.1 いまの1500円から1000円の引き上げ

特例加算は、令和4年の生活保護基準部会の検証結果に基づく令和元年当時の消費実態の水準に、1人あたり月額を上乗せする措置です。

令和5年度から令和6年度は1人あたり月額1000円、令和7年度の見直しで500円引き上げられて1500円になりました。

令和8年度はここからさらに1000円引き上げられ、1人あたり月額2500円になります。

1.2 令和8年10月から1年間の臨時的・特例的な措置

今回の引き上げは恒久的なものではありません。

資料では、社会経済情勢等を総合的に勘案し、令和8年10月から1年間、特例加算の額を1000円引き上げるとされています。施行時期は令和8年10月からです。

財政影響額は年間で110億円程度、令和8年度分としては60億円程度と見込まれています。

なお入院患者と介護施設入所者については、食費や光熱費等が現物給付されている状況等を踏まえ、1人あたり月額1000円の加算額が維持されます。

2. 生活保護の特例加算が1000円増えても、基準額が変わらない世帯がある

ここからが本題です。同じ1000円の引き上げでも、基準額の動き方は世帯によって違います。

2.1 世帯類型と級地ごとの基準額

資料には、世帯類型ごとの生活扶助基準額が示されています。令和7年度基準は令和7年10月から令和8年9月まで、令和8年度基準案は令和8年10月から令和9年9月までに適用される額です。

高齢単身世帯(65歳)の1級地-1は、令和7年度が7万6880円で、令和8年度案も7万6880円です。差はありません。

一方、同じ高齢単身世帯(65歳)でも2級地-1は7万2490円から7万3490円となり、1000円そのまま増えます。

同じ1000円の引き上げでも、据え置きになる世帯と満額増える世帯に分かれます1/2

世帯類型・級地ごとの生活扶助基準額。高齢単身65歳の1級地-1は7万6880円で据え置き、2級地-1は7万2490円から7万3490円へ1000円増加など6区分の比較表

出所:厚生労働省「令和8年度生活扶助基準の見直しについて」(第55回社会保障審議会生活保護基準部会 資料4)をもとにLIMO編集部作成

1級地-1では、高齢単身世帯(75歳)が7万1900円、若年単身世帯(50歳代)が7万7240円で、いずれも令和7年度から変わりません。

これに対して高齢夫婦世帯(65歳)の1級地-1は12万1900円から12万3900円へ、2000円増えます。

2.2 分かれ目は「従前額保障」というしくみ

この差が生まれるのは、特例加算とは別にもう一つの措置が働いているためです。

資料には、特例加算の措置をしても従前の基準額から減額となる世帯については従前の基準額を保障する、と書かれています。これが従前額保障です。令和8年度もこの措置は継続されます。

つまり基準額は、令和4年の検証結果に特例加算を足した額と、従前の基準額を比べて、高いほうが適用されるかたちになります。

高齢単身世帯(65歳)の1級地-1で当てはめてみます。

1級地-1は特例加算を足しても従前の基準額に届かないため、令和8年度案も従前の額のままです2/2

高齢単身世帯65歳の従前額保障のしくみ。1級地-1は令和4年検証結果7万4250円に特例加算2500円を足すと7万6750円だが、令和8年度案は従前額の7万6880円。2級地-1と3級地-2は加算後の額がそのまま適用される比較表

出所:厚生労働省「令和8年度生活扶助基準の見直しについて」(第55回社会保障審議会生活保護基準部会 資料4)をもとにLIMO編集部作成

1級地-1は令和4年の検証結果が7万4250円で、特例加算2500円を足すと7万6750円です。従前の基準額7万6880円のほうが高いため、そちらが適用されます。

特例加算が1500円だったときも同じ理由で7万6880円だったため、結果として基準額は動きません。

2級地-1は令和4年の検証結果が7万990円で、2500円を足すと7万3490円になります。こちらは従前額保障の対象にならないため、加算した額がそのまま基準額になります。

3. 生活保護の特例加算は級地と世帯人数で効き方が変わる

ここまでを整理すると、増え方は2つの要素で決まります。

3.1 級地によって届く額が違う

級地は物価や生活水準の地域差を反映して区分されたもので、1級地-1がもっとも基準額が高く設定されています。

基準額が高い級地ほど従前の基準額も高いため、特例加算を足しても従前額に届かない状態が起きやすくなります。

資料の例では、2級地-1と3級地-2の単身世帯はいずれも1000円が反映されていました。

3.2 世帯人数の分だけ加算される

特例加算は1人あたりの金額です。

そのため2人世帯であれば2人分が加算されます。高齢夫婦世帯(65歳)の1級地-1で2000円増えているのは、1000円の2人分という計算です。

ただし高齢夫婦世帯(75歳)の1級地-1は11万2390円から11万2470円となり、増えるのは80円にとどまります。従前額保障の線をわずかに超えた分だけが反映されるためです。

中本 智恵
「加算が1000円増える」という見出しだけを見ると、どの世帯も同じだけ増えるように読めます。実際には従前額保障との比較で決まるため、お住まいの級地と世帯の人数によって届く額が変わります。ご自身の世帯がどうなるかは、お住まいの自治体の福祉事務所で確認するのが確実です。