4. 個人向け国債の発行額が落ち込んだ時期は、利率も下限に近かった
発行額の動きは、そのときの利率と重ねて見ると読み取りやすくなります。
4.1 2019年1月から2021年3月までは3タイプとも年0.05%だった
財務省の資料で回号ごとの利率をたどると、2019年1月発行分から2021年3月発行分までの27か月は、固定3年・固定5年・変動10年のいずれも年0.05%でした。下限に張りついていた時期です。
この時期をはさむ2020年の発行額は3兆6614億円、2021年は2兆9552億円です。2019年の5兆551億円からは減っています。
どのタイプを選んでも利率が同じであれば、満期の長さだけが違いになります。選ぶ手がかりが少なくなる時期だったとも言えます。
4.2 2026年10月発行分は固定5年が年2.24%まで上がった
そこから利率は上がり、2026年10月発行分の固定5年は年2.24%です。年0.05%だった時期と比べると、水準がはっきり変わりました。
2026年に入ってからの月ごとの発行額を見ると、1月が5033億円で、8月は1兆177億円、9月は1兆729億円です。利率が上がった月に発行額も伸びています。
ただし、発行額が動く理由は利率だけとは限りません。ほかの金融商品の状況や、そのときの家計の余裕にも左右されます。
5. 発行額が多いタイプを選べばよい、という数字ではない
発行額を見るときに、気をつけておきたいことがあります。
5.1 発行額は買われた金額の合計である
発行額は、その回号で実際に買われた金額の合計です。多くの人が選んだという事実は分かりますが、その選び方が自分に合っているかどうかは別の話です。
2026年9月発行分で固定5年が55.9%を占めたのは、5年という期間で利率が最も高かったことが一因だと考えられます。ただ、5年間そのままにできる資金かどうかは、申し込む前に確かめておきたいところです。
5.2 選ぶ基準は満期と使う時期
個人向け国債は発行後1年を経過すれば中途換金できますが、そのときは差し引かれる額があります。この点については、LIMOの記事「財務省、2026年7月募集「個人向け国債」の金利を公表!400万円購入した場合の受取利息をシミュレーション!手取り利息と解約調整額のポイント」でも注意点として挙げられています。
個人向け国債は、発行から1年が経過すれば、1万円単位で中途換金(解約)を行うことが可能です。ただし、中途換金をする際には所定の中途換金調整額が差し引かれる点に注意が必要です。
出所:財務省、2026年7月募集「個人向け国債」の金利を公表!400万円購入した場合の受取利息をシミュレーション!手取り利息と解約調整額のポイント
差し引かれるのは、直前2回分の各利子(税引前)相当額に0.79685を掛けた額です。
満期まで持てる資金かどうかを先に決めておくと、3タイプのどれを選ぶかも決まりやすくなります。発行額の多さは、その判断の代わりにはなりません。
使う時期が決まっていない資金であれば、満期の短いタイプから検討するという考え方もあります。
6. まとめにかえて
個人向け国債の2026年9月発行分の発行額は1兆729億882万円で、内訳は固定5年が5996億5832万円、変動10年が3315億2196万円、固定3年が1417億2854万円でした。
2026年1月から9月までの合計は7兆2696億円です。2010年に9037億円まで落ち込んだことを思えば、大きく戻ってきました。年間で最も多かった2006年の7兆5605億円に近づいています。
いま募集されている2026年10月発行分は、固定5年が年2.24%、固定3年が年1.96%、変動10年が年1.95%です。どのタイプを選ぶかは、満期まで持てる資金かどうかから考えたいところです。迷うときは取扱金融機関の窓口でも相談してみてください。
参考資料
- 財務省「個人向け国債の発行額の推移」
- 財務省「個人向け国債」
- 財務省「固定5年『第186回債』の発行条件」
- 財務省「固定3年『第196回債』の発行条件」
- 財務省「変動10年『第198回債』の発行条件」
- 財務省「個人向け国債の金利についてのよくある質問」
和田 直子