「貯蓄はいくら」という話はよく耳にしますが、「その貯蓄を、どんな形で持っているか」まで考える機会は、意外と少ないのではないでしょうか。秋は、1年の家計をふり返り、来年に向けてお金の置き場所を見直すのにちょうどよい季節です。

とくに年金を受け取りながら暮らす世代にとって、預貯金と運用のバランスは、これからの安心を左右する大切なテーマです。物価がゆるやかに上がり続けるいま、「持ち方」をあらためて確かめておきたいところです。

そこでこの記事では、総務省の家計調査(2025年)をもとに、65歳以上の夫婦世帯が貯蓄をどんな種類で持っているのか、預貯金・有価証券・保険といった内訳をやさしくひもとき、これからのお金の置き場所を考えるヒントをお伝えします。

宮野 茉莉子

貯蓄額そのものだけでなく、「何で持っているか」に目を向けると、家計の見え方がぐっと広がります。預貯金、有価証券、保険では、それぞれ役割がちがうからです。

まずは、平均的なシニア世帯の内訳を、いっしょにのぞいてみましょう。

1. 【65歳以上・リタイアした夫婦世帯】平均貯蓄額2494万円のなかみは?

総務省の家計調査(貯蓄・負債編)で、世帯主が65歳以上の無職世帯(二人以上)をみると、2025年の貯蓄現在高は平均2494万円でした。この2494万円を種類別にみると、内訳は次のようになっています。

65歳以上・夫婦世帯(無職)の貯蓄の内訳(種類別)1/2

65歳以上の無職世帯の貯蓄の種類別内訳

出所:総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)2025年(令和7年)平均結果の概要(二人以上の世帯)」をもとにLIMO編集部作成

もっとも多いのは定期性預貯金で778万円、次いで通貨性預貯金が766万円です。この2つを合わせた預貯金が、全体のおよそ6割を占めています。すぐに引き出せる安心感があり、値動きがないことが、預貯金の大きな役割です。

いっぽうで、有価証券が510万円(全体の約2割)、生命保険などが426万円(約1割7分)と、預貯金以外の形でも一定の割合を持っていることがわかります。つまり、シニア世帯の貯蓄は預貯金が中心でありながら、運用や保険にも無理のない範囲で分けられている、というのが平均的な姿です。

前の年とくらべると、この内訳は少しずつ動いています。定期性預貯金は81万円(9.4%)、通貨性預貯金は35万円(4.4%)減ったいっぽうで、有価証券は1.8%、生命保険などは8.1%増えました。物価がゆるやかに上がるなかで、預貯金だけにとどめず、運用や保険にも少しずつ目を向ける世帯が増えていることが、数字からもうかがえます。とはいえ、これはあくまで全体の平均で、どんな形が合うかは、暮らし方や考え方によって世帯ごとに変わってきます。

参考までに、貯蓄額そのものは、65歳以上の二人以上世帯全体でみると平均2564万円、真ん中の世帯に近い中央値は1777万円です。金額には世帯ごとに幅がありますが、大切なのは、その金額を「どんな形で持つか」を、自分の暮らしに合わせて考えることです。持ち方は、多い少ないで決まるものではなく、それぞれの世帯の考え方があらわれる部分だといえます。

宮野 茉莉子

数字の読み方をひとつ。この内訳は、総務省が全国の世帯を対象に行う家計調査から、世帯主が65歳以上の無職世帯(二人以上)をまとめたものです。定期性・通貨性の預貯金、有価証券、生命保険などに分けて、貯蓄全体の姿をあらわしています。

前の年とくらべると、預貯金はやや減り、有価証券や生命保険はわずかに増えました。物価が上がるなかで、預貯金だけにせず、運用も少しずつ取り入れる動きが、数字にもあらわれているのかもしれません。次のページでは、この「現金と運用のバランス」を、これからどう考えていくとよいのかを、いっしょに整理していきます。目的に合わせてお金の置き場所を分けるだけで、家計の見通しはぐっと立てやすくなります。